胃潰瘍から胃がんになるのか?

回答者●山口俊晴
がん研有明病院副院長・消化器外科部長
発行:2011年3月
更新:2019年9月

  

2010年管理職に就き、重責と仕事量の増加のためか、ストレスに悩むようになりました。最近、食後にみぞおちが痛くなる状態が続いたため、胃カメラで検査したところ、胃潰瘍がいくつかできていました。現在は薬を飲んでいます。胃潰瘍が胃がんに変わると昔聞いたことがありますが、本当でしょうか。本当だとしたら、胃がんにならないようにする予防法があれば、教えてください。

(45歳 男性 長野県)

胃潰瘍が胃がんになる可能性は低い

がん研有明病院
副院長・消化器外科部長の
山口俊晴さん

慢性の胃潰瘍が胃がんになると考えられていた時期もありましたが、現在はそのような可能性は低いことがわかっています。

ただ、胃がんの発生する場所は胃潰瘍の発生しやすい部位と一致していますので、まったく無関係というわけではありません。潰瘍や胃炎などの刺激が長期間続くと、胃がんができやすくなる可能性があります。

また、最近はピロリ菌感染が、胃潰瘍や十二指腸潰瘍が繰り返し起こる原因になることが明らかになってきました。ピロリ菌は胃酸のある過酷な状況の中で増殖し、潰瘍や慢性胃炎の原因になります。幼児期に経口感染するといわれています。潰瘍を繰り返す原因がピロリ菌にある場合には、これを治療(除菌という)しておくのがよいでしょう。ただし、すでに慢性胃炎が出来上がっている場合には、胃がんの予防効果は期待できないのではという意見もあります。

治療は抗生物質と胃酸分泌を抑制する薬を組み合わせたものを1週間服用します。この治療によって、80パーセント以上でピロリ菌が消えてしまいます。

ストレスは胃炎や潰瘍の発生を促進する因子の1つですが、ストレスを取り除くだけでは、必ずしもこれらの病気はなくなりません。1度ピロリ菌がいるかどうか検査されることをお勧めします。ピロリ菌感染の診断は、内視鏡検査のほかに、呼気を調べたり、血液を検査したりすることでも可能です。

胃がんにならないように気をつけるべきこととして、まずは塩分の高い食事は控える、そして煙草を吸わないことです。

言うまでもなく、煙草はあらゆる部位のがんの発生率を上げます。肺がん、喉頭がん、咽頭がん、舌がん、食道がん、胃がんはもちろん、そのほかの部位のがんの発生率も上がります。

また、がんだけではなく、心臓の病気や心筋梗塞、脳梗塞などさまざまな病気の要因となり、健康によいことは1つもありません。皆が煙草をやめれば、がんにかかる人の数は2~3割は減ると思われます。

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