術後、開いた吻合部に対する治療法は?

回答者:山口 俊晴
がん研有明病院 副院長・消化器外科部長
発行:2011年3月
更新:2019年7月

  

先月、地方に住む65歳の父が胃がんの全摘手術を受けました。術後、発熱が続き、絶食しました。CT検査を受けたところ、食道と小腸の吻合部が開いてしまっていることがわかりました。その後も発熱が続き、解熱剤で対応しています。食事は絶食したままですが、今後どういう治療法が望ましいのでしょうか。いずれ食事はとれるようになるのでしょうか。

(東京都 女性 30歳)

A もれ出る消化液などを外に出しつつ、傷が治るのを待って

胃の手術後の合併症の1つである縫合不全が起きたものと思われます。縫合不全とは手術で縫った傷が癒合しないことを指します。お父様のケースは、食道と小腸を縫い合わせたところが癒合しないために、唾液や消化液がもれて腹膜炎を起こしたのでしょう。原因はいろいろありますが、食道は血流がほかの腸管に比較して乏しいため、とくに縫合不全がおきやすい部位といえます。

治療法は、うまく癒合しなかった部位をもう1度縫い合わせればよいように思われるかもしれませんが、多くの場合、そのような処置では再び傷が開いてしまいます。

一般的には、もれ出てくる唾液や消化液をドレーンという管でおなかの外に導き出して、傷が自然に治癒するのを待ちます。通常4~6週間くらいで改善します。胃の全摘手術では部分切除に比較して、縫合不全の起こる可能性が高いので、手術のときに予防的にドレーンを縫合部近くに留置することが通常行われます。 今回のご相談のケースもドレーンが入っていると思われますので、そこからもれたものが順調におなかの外に導き出されていれば、栄養を十分につけながら治るのを待つのがベストです。口から食べることはできませんが、静脈から栄養を入れたり、小腸に細い管を入れて、そこから栄養を入れる、経腸栄養などが行われたりします。

このような合併症は、ある程度の頻度で必ず起こるもので、医療ミスではありません。担当医の指示に従って治療を続けるのがよいでしょう。

もちろん、傷が治れば食事はできるようになりますが、治る過程で縫合部が狭くなることがあります。そのようなときには内視鏡で拡張することで、食べられるようになります。発熱は腹膜炎を起こしているせいで起こっているので、その治療をしない限り熱が下がることはありません。

CT=コンピュータ断層撮影
癒合=傷が治り、離れていた皮膚が付着すること。傷口がふさがること

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート4月 掲載記事更新!