腹膜播種を起こした胃がん。よい治療法は?

回答者:山口 俊晴
がん研有明病院 副院長・消化器外科部長
発行:2010年10月
更新:2019年7月

  

70歳の父のことでご相談します。最近、父が病院で検査を受けたところ、腹膜播種を起こした胃がんと言われました。今の状態では、手術を受けることは難しいとのことです。ただ、インターネットなどで調べてみると、このようなケースでは、化学療法を行ってから、手術をする方法などもあるようです。腹膜播種を起こした胃がんに対して、何かよい治療法はないでしょうか。ご意見をお聞かせください。

(宮城県 女性 39歳)

A 腹膜播種の治療は化学療法が基本

腹膜播種は、がん細胞がお腹の中に、種をまくように広がった状態のことで、胃がんの転移・再発において最も多く、そして、治療の難しい病態です。

治療の原則は抗がん剤による化学療法。具体的には、抗がん剤のTS-1を単独で使うか、あるいはシスプラチン(一般名)などと併用することが多いです。抗がん剤による化学療法では根治は望めませんが、症状の改善や延命が期待できます。

腹膜播種の主な症状は、腹水がたまることや、大腸や小腸の壁にがん細胞が増殖するために腸閉塞を起こすことなどです。

腹水は、利尿剤で治療したり、時には腹水を抜いたりします。腸閉塞の場合、狭くなった場所や、狭くなった場所の数によっては、人工肛門を作ったり、バイパス手術をしたりして、経口摂取を可能にすることも行われます。

腹膜播種があるのに胃の手術が行われるのは、胃がんによる胃からの出血がひどかったり、胃が狭くなって経口摂取ができなかったりする場合などです。とはいえ、胃を切除しても、腹膜播種が治るわけではありませんので、腹膜播種のある場合には、手術は慎重に行うべきです。

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