手術後、腹痛や下痢に。改善法はないか

回答者●山口俊晴
がん研有明病院副院長・消化器外科部長
発行:2010年7月
更新:2020年3月

  

半年ほど前、胃の上部の噴門部に胃がんが見つかりました。噴門部寄りの胃の切除手術を受けました。手術後、腹痛と下痢が起こるようになりました。とくに食事をした後に腹痛や下痢、吐き気などがあります。食事はゆっくりと少しずつ、回数を多くとるなどの工夫をしていますが、症状はあまりよくなりません。これらの症状を改善する方法を教えてください。

(島根県 男性 52歳)

食事をゆっくりと少しずつとるのが大切

がん研有明病院副院長の
山口俊晴さん

症状を改善するために、食事は脂っこいものや乳製品を避けて、ゆっくり食べることが大切です。食事の回数を1日に5回とか6回にすることは、現実的には無理です。間食をとって栄養補給をしてください。カロリーメイトなどの栄養補助剤を利用するのもよいと思います。ゼリー状の栄養補助剤などもいろいろと出ています。

術後の後遺症の現れ方には個人差があります。手術直後からよくなる方もいますし、症状が治まるのに1年かかる方もいます。いずれにしても、食事はゆっくりと少しずつという原則は、生涯続くと思ってください。

ご質問からは、噴門部寄りの胃切除をしたときに、どんな再建をしたのかがわかりません。噴門部寄りの胃切除後の再建の方法には2種類あります。どちらの方法かによって、後遺症の現れ方は違ってきます。

1つは食道胃吻合です。これは食道と残した胃を直接つなぐ再建の方法。この場合、術後に逆流性食道炎を起こしやすくなります。苦い水(腸液)や酸っぱい水(胃液)が口のほうへ上がってきて、炎症を起こします。胸やけなどの症状が見られることもあります。こうした症状には、胃酸を止める制酸剤などを用いて対処します。

2つめは空腸間置。空腸の一部を切ってきて、食道と残した胃をつなぎます。この再建をしたから、たくさん食べられようになるわけではありません。残胃のところで、食物が詰まってしまって、症状を起こすこともあります。こうした症状には有効な対策がありません。食物が詰まらないように、できるだけゆっくりと食べるなどの工夫をするしかありません。

どちらの再建法でも、後遺症はなかなかよくはなりません。残した胃のところにがんができる可能性もあります。また、再建したあとは検査が難しくなります。こうした理由から、噴門部寄りの胃切除は、後遺症が多いという点では好ましい手術だとはいえません。

術後の後遺症で悩んでいるたくさんの患者さんのお話や訴えを聞いていると、小さな胃を残すよりは、全摘手術をしたほうが後遺症は少ないようです。とくに進行胃がんの場合は、全摘手術で胃を全部取ったほうが後遺症は少ないと思います。

後遺症に対する適切な対策を考えるためにも、どんな手術をしたのかを確かめることが大切です。

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