がん性腹膜炎の有効な治療法は?

回答者:山口 俊晴
がん研有明病院 副院長・消化器外科部長
発行:2008年3月
更新:2019年7月

  

64歳の父のことでご相談です。1年前に、胃の内視鏡検査で胃体下部(出口側)に病変が見つかり、胃がんと診断されました。手術で胃を3分の2切除しましたが、がんは胃の外側の膜まで達していて、リンパ節にも転移していたようです。最近、再発を告げられました。担当医から「がん細胞がお腹の中で、種を播くようにぱらぱらと広がるがん性腹膜炎を起こしていて、有効な治療法はない」との説明を受けました。それでも、少しでも有効な治療法を探しています。最新の化学療法や、再手術の可能性などについて、教えてください。

(大分県 女性 39歳)

A 最近ではTS-1を用いることが多い

胃がんの手術後の再発では、この例のような腹膜再発が、一番頻度が高く、しかも治療法が難しいものです。手術や化学療法で腹膜再発を完全に治すのは困難と考えたほうがよいでしょう。

がん性腹膜炎では、患者さんにさまざまな障害が起きます。その障害は、大きく分けて2つあります。1つは腹水が貯まってきてお腹が膨らんでくることです。ひどくなってくると呼吸をすることも苦しくなってきます。化学療法によって腹水が一時的に消失することがあります。また、利尿剤を投与して腹水を減らすことも試みられます。どうしても腹水がコントロールできない場合には、腹水を抜くことも行われます。

2つ目は腹膜で増殖したがん細胞が大きくなり大腸や小腸を圧迫して、腸閉塞の症状が出てくることです。腹痛が起こったり、排ガスや排便がなくなり、嘔吐することもあります。食事や水分をとることができなく、嘔吐のために水分と塩分が急速に失われ、栄養状態も悪くなります。狭くなっている場所や、その場所の数などによっては、手術によって狭くなったところを切除したり、バイパスを作る手術を行います。人工肛門を造る場合もあります。

この患者さんの場合、腸閉塞や大量の腹水がないのであれば、積極的に化学療法を試みることで延命を図れることがあります。最近では、日本で開発された経口抗がん剤TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)を用いることが多くなりました。TS-1は、これまで使用されてきた抗がん剤よりも、奏効率が高く、比較的副作用の少ないのが特長です。

また、狭窄ができた場合には、以前なら積極的に手術は行いませんでしたが、化学療法などがよく効くようになってきましたので、全身状態さえ許せば食べられるようにする手術を行うことも検討すべきです。担当医とよくご相談ください。

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