手術後リンパ節転移。補助化学療法の内容は?

回答者:山口 俊晴
がん研有明病院 副院長・消化器外科部長
発行:2007年12月
更新:2019年7月

  

1B期の胃がんで、腹腔鏡下手術を受けました。手術前の診断では、リンパ節転移はなく、がんは筋層まで及んでいるという話でしたが、手術後の病理検査では、リンパ節転移がいくつか認められました。開腹手術を選択しなかったことを今、悔やんでいます。今後は、抗がん剤による補助化学療法を行うと言われていますが、どんな抗がん剤を使うのでしょうか。それで治る可能性はあるのでしょうか。今から開腹手術はできないのでしょうか。

(神奈川県 女性 51歳)

A TS-1の内服で、再発率はかなり下がる

1B期の胃がんで手術を行う場合、開腹でも腹腔鏡下でも、リンパ節を取る範囲は同じです。したがって、開腹であれば良かったと悔やむ必要はありません。

施設によっては手術中にその場でリンパ節転移があるか診断(術中迅速診断といいます)して、リンパ節を取る範囲を変更することはあります。いずれにしろ、術後の治療は最終的に切除した標本を詳しく検討してから決定します。

進行度が最終的に1A、あるいは1Bであった場合には、原則として化学療法は必要ありません。ご相談者の場合、深さは粘膜下層ですが、リンパ節転移が第1群といって、胃に接したリンパ節に限局している場合には、進行度は1Bになりますから、追加治療は必要ありません。しかし、リンパ節転移が胃から少し離れた第2群まで達しているときには、抗がん剤による追加治療が有効です。

ご相談者は今後、経口抗がん剤である、TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)の補助化学療法を受けるとよいと思います(1年間服用します)。最近の研究では、TS-1を服用することによって、手術3年後の死亡率はおよそ30パーセントから20パーセントに減少します。言い換えると、再発による死亡を約33パーセント減らすことができます。なお、ご相談者のようなケースで、リンパ節郭清の追加のために再度、開腹手術を行うことは通常ありません。

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