食欲不振と胃全摘後の切除創の痛み。対処法は?

回答者:山口 俊晴
がん研有明病院 副院長・消化器外科部長
発行:2005年9月
更新:2019年7月

  

私は、スキルス性の胃がんで、今年春に胃の全摘をしました。術後は自宅にてTS-1を服用しています。味覚も変化し、食欲不振になって体重が減ってしまいました。おかゆなど、流動食を主に食していましたが、胃の噴門部あたりがきりきりと痛み、最近では唾を飲み込むだけで痛みが出ます。さらに食事が摂れなくなってしまい、担当医に話すと輸液で栄養を補充する方法がある、と言われました。しかし、私は口でものを食べられなくなるのはいやなのです。現在、炎症を抑える薬を服用していますが、何か他に対処法などがありましたら教えてください。

(東京都 男性 62歳)

A 場合によっては輸液も検討。痛みには内視鏡検査を

胃の全摘を行った後、抗がん剤を服用中で、味覚変化、食欲不振などに苦しんでおられるとの相談ですが、原因は手術そのものの後遺症あるいは、抗がん剤による副作用による可能性があります。手術後に味覚の変化が認められるのは、比較的よく経験されます。時に亜鉛の不足による味覚障害もあり、これは亜鉛を含む薬剤の服用で改善することがあります。また、現在服用中のTS-1の副作用である可能性もあります。休薬期間に食欲が改善するようであれば薬剤の副作用の可能性が高いといえましょう。

体重減少の原因は、手術による食事摂取量の減少がもっとも大きなものだと思われます。通常、健康なときの5~10パーセント減少した体重に落ち着くことが多いのですが、個人差があり、場合によってはそれ以上にやせる人や、ほとんどやせない方もおられます。

ゆっくりしか食べられないので、たくさん食べたような気になりますが、実際の摂食量は少ないものです。たくさん食べられませんから、野菜などのようにほとんどカロリーのないものより、高カロリーの食物を優先的に食べましょう。食物の消化吸収はそのほとんどが小腸で行われますから、肉類や魚、乳製品などしっかりしたものを食べましょう。おかゆはご飯をお湯で薄めたようなもので、かさが増えますので、食べられるのであれば普通の米飯が良いと思います。

普通の食事が食べにくければ、ビスケット型、流動型、ゼリー型などの栄養食品(カロリーメイトなど)のうち、自分にあったものをうまく使うのも良い方法です。食道と小腸を吻合した部分が狭くなっていることもあり、拡張することで改善することもありますから、内視鏡などで確認してもらいましょう。

胃の噴門部辺りの痛みですが、胃の全摘をしたのですから胃の入り口である噴門は存在しません。おそらく、食道に消化液が逆流するために、食道炎が起きて痛むのだと思います。内視鏡検査でわかりますから、狭窄の有無とともに食道炎の有無も調べてもらってください。食道炎によるものであれば、これに対するお薬がいくつかあるので処方してもらいましょう。

口からだけの食事で栄養状態が悪い場合には点滴をしたり、太い静脈から高カロリーの栄養を入れることが可能です。手術後は手術の影響もありスムースに食事が取れないことが珍しくありません。そんなときには無理に食事を押し込んでも苦しくなるばかりですから、無理をしないでこれらの方法の力を借りるほうがきっと良い結果が得られます。あまりに栄養状態が悪いと、抗がん剤を続けることも難しくなります。経口摂取にこだわらず、早めの栄養改善を図ってください。

休薬期間=TS-1は通常数週間服用して1~2週間薬を服用しない期間をおくスケジュールで投与される

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