大腸がんのように、胃がんにも個別化療法ってあるの?
知人が半年ほど前に、大腸がんと告知されました。大腸がんでは抗がん剤治療を行う前に、その効果を判定する上で、KRAS検査という検査が行われ、個別化治療の1つだと言われたそうです。胃がんでも個別化治療はあるのでしょうか。
(長野県 男性 52歳)
A 乳がんで使われるHER2試験が転移性胃がんにも適用
副院長・消化器外科部長の
山口俊晴さん
乳がんの分子標的薬として用いられているハーセプチン*が、2011年3月、HER2過剰発現が確認された切除不能な進行・転移胃がんに対して承認されました。
今回報告された臨床試験は、ToGA試験と呼ばれています。HER2陽性進行・再発胃がん患者584例を、ゼローダ*または5-FU*+シスプラチン*投与群(290例)と、ゼローダまたは5-FU+シスプラチンにハーセプチンを併用する群(294例)に分けてその効果を比較しました。
試験の結果、全生存期間中央値は、化学療法単独群が11.1カ月、ハーセプチン併用群が13.8カ月となり、ハーセプチン併用の全生存期間延長が確認されました。また、新規または予想外の副作用は観察されなかったそうです。
現在のところ、胃がんではこれが唯一、有効性が示された個別化学療法です。5-FUもゼローダも同じ系統の薬剤ですが、わが国ではこれらと同じ系統のTS-1*が広く使われており、今後TS-1との併用も同様の効果があるのか興味のあるところです。
また、投与対象がまだ限定的であること(胃がん患者の20パーセント)や効果の程度、費用などを考慮すると、患者さんにとって、胃がんに対する分子標的薬がもっと出てこなくてはいけません。今回をきっかけに、さらなる分子標的薬が生まれればいいと思います。
*ハーセプチン=一般名トラスツズマブ *ゼローダ=一般名カペシタビン *5-FU=一般名フルオロウラシル *シスプラチン=一般名 *TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム