手術後お腹が痛み、膨れているが大丈夫か?

回答者●山口俊晴
がん研有明病院副院長・消化器外科部長
発行:2012年7月
更新:2019年11月

  

胃がんのため、3カ月ほど前に近くの病院で、胃の3分の2と腸の一部、胆嚢を取る手術を受けました。ところが、手術後2カ月ぐらいしてから、お腹の内部がすごく痛むようになりました。TS-1の抗がん剤を飲み始めてからのことです。先生はしかたがないと言いますが、大丈夫でしょうか。どうにもつらいので今は抗がん剤を止めて、痛み止めを飲んでいます。そのうえ、術後7kgも痩せたのに、お腹だけがぱんぱんに膨れています。ズボンのジッパーがあがらないほどです。先生に聞くとわかりませんと言われました。お腹が痛くて腫れていることはもちろん、現在治療を中断していることも心配です。

(70歳 女性 香川県)

食べ方を工夫したり、痛み止めで対処

がん研有明病院副院長・
消化器外科部長の山口俊晴さん

手術してから3カ月という、術後でも比較的早い時期の場合には、手術によるさまざまな腹部症状が出現することは珍しくありません。痛みについては、さまざまな原因が考えられます。

たとえば、手術を受けたことによって、腸管やお腹の傷などとの間に癒着が生じることは、通常よく起こります。癒着により腸が狭くなったり、急角度で曲がったために、食べ物の流れが妨げられると腹痛が起きます。

また、術後には残った胃が小さくなっていますが、そこに急にたくさんの食べ物を詰め込むと、胃が拡げられて痛みが出ることもあります。

さらに、ダンピング症状による影響も考えられます。これは、食べたものの一部が、小さくなった胃から急に小腸に流れ込むために起こる症状です。主な症状は、冷や汗、動悸、めまい、全身脱力感などですが、症状は幅広く、腹痛や悪心などが現れることもあります。

このようにさまざまな原因が考えられるわけですが、食べ方を工夫したり、痛み止めなどの薬によって対処します。どれも、時間とともに改善していく場合が多いので、まず心配はありません。ただし、癒着などをきっかけに腸がねじれると、激痛が起きるだけでなく、放置しておくと血流が悪くなり、最悪の場合には腸に穴が開いたりすることもあります。痛みが極度に強い激痛の場合は、レントゲンやCT検査が必要です。

手術後にお腹が張る原因としては、腸管の中にガスがたまる、腹腔内に腹水がたまるなどが考えられます。手術後は、食べ物などと一緒に口から飲み込んだ空気や、消化の過程で発生したガスが、腸からうまく吸収されにくくなります。そのため、腸管にガスがたまってしまい、おなかが張ったり、おならがたくさん出るようになります。

この症状は次第に改善していきますが、食事のときにはなるべく空気を一緒に飲み込まないように注意することも大事です。ガスがたまりやすいのは、胃にたまったガスをうまくげっぷとして出せなくなることも、影響しています。

腹水がたまる原因としては、食事が思うようにとれず低タンパク質状態になるなど、栄養状態が悪い場合、また、胃がんが腹腔内に播種として再発している場合などが考えられます。これらは、超音波検査やCT検査などで診断できます。

治療を中断していることがご心配とのことですが、胃がん手術後の補助化学療法の場合、TS-1を1年間という長い期間服用するものです。ですから、副作用が強かったり、お腹の症状が強く出る場合には、一時的に薬の服用を中止したり、量を減らして対処します。もちろんきちんと服用できたほうがいいのですが、無理をして体調を壊すよりも、短期間であれば休薬したほうがいいでしょう。

TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム

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