腫瘍内科医のひとりごと 139 帯状疱疹ワクチン

佐々木常雄 がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
発行:2022年7月
更新:2022年7月

  

ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数

Aさん56歳、男性です。昨日から、右の肩から腕にかけてチクチクするというのです。皮膚には何も変化はありません。1年前に胃がんの手術後に、抗がん薬治療を受けていた患者さんです。

私は帯状疱疹を疑うと、すぐ患者さんを皮膚科に紹介します。もし治療が遅れれば、疱疹が消えても神経に沿った痛みが長く残る方がおられるのです。場所によっては、麻酔科にお願いして神経ブロックを検討しなければならないこともありました。

Aさんは2日後に赤い発疹が出て、なかに水疱があります。

やはり帯状疱疹の診断でした。すぐにアシクロビル(抗ヘルペスウイルス薬)の内服を開始し、幸い、痛みは残らずに治癒しました。

帯状疱疹は、子どもの頃に罹った水痘(水ぼうそう)ウイルスが体の中に潜んでいて、何らかの原因で再活性化したときに起こります。

この〝何らかの原因〟としては加齢、ストレス、疲労、がんなど免疫力の低下が考えられるのです。

50歳以上は、ワクチン接種で予防が可能

最近は、帯状疱疹の予防に、シングリックスという乾燥組換え帯状疱疹ワクチンがあります。2回の接種が必要で、2回目は、2カ月から6カ月内に行いますが、費用は自費負担になります。

帯状疱疹の予防効果は50歳以上で97%、70歳以上で90%と、とても高い有効率です。主な副反応としては、注射部位の痛み78%、赤み38%、腫れ26%、筋肉痛40%、疲労39%、頭痛33%、悪寒24%、発熱18%などです。

昨年末、私は、このワクチンを接種しました。

以下、私の経過です。

某月5日、午後2時、某病院のワクチン担当医に左上腕に接種してもらいました。確かに筋肉注射は痛かったのですが、無事、何事も起こらずにすみました。夜も注射部の痛みは残っていました。

翌6日朝、注射部位は赤く腫れていました。体のあちこちが痛く、反対側の腕、大腿などの筋肉痛です。そしてだるく、1日中、何もする気になれず、だらだらして過ごしました。熱っぽい気がして、体温を朝、昼、晩と計りましたがいずれも36.4℃でした。

7日朝、だるさも筋肉痛も半減しました。この日は定期の循環器内科受診がありました。病院ではいつもの採血、心電図をとって受診を待ちましたが、予約時間の前に診察室に呼び出だされました。

急いで入ると、担当医から「何かありましたか? CRP値(炎症反応が起きると血中に現れる急性期反応タンパク質の1つ:基準値0.3以下)が2.99と上がっています」と言われ、一昨日に帯状疱疹のワクチンを接種したことを話しました。

検温では36.1℃、酸素飽和度99%、咳も、息苦しさもなく、心電図も問題ないとのことで診察は終わりました。

8日以降は、元気さが戻りました。

2回目は3カ月後に受けました。翌日、注射部位の痛み、軽い頭痛などありましたが、そのつもりでいたためか、その後はとくに問題なく過ごしました。

最近は、ワクチン接種と言えば、新型コロナウイルスのことが頭に浮かびますが、ワクチン接種の意味は大きく違います。

帯状疱疹ワクチンを受けるかどうかは、担当医とよく相談されるのが良いと思います。

これまでいろいろなワクチン接種で、なにもなかった方でも、副反応が出る可能性がありうることを知っておいたほうが良いと思いました。

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