腫瘍内科医のひとりごと 164 喫煙とがんで思うこと

佐々木常雄 がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
発行:2024年8月
更新:2024年8月

  

ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数

国および都道府県において、がん対策推進計画は「がん予防」、「がん医療の充実」及び「がんとの共生」の3本を柱としてきました。

がん予防――受動禁煙も大きな問題

今回は、がんの1次予防として、喫煙についてふれます。

喫煙とがん発症との関連が明らかになっているがんは、肺がんだけではなく、頭頸部がん、食道がん、胃がん、肝がん、大腸がんなどがあります。

また、喫煙が原因となる病気はがんだけではありません。脳卒中や心筋梗塞なども該当します。喫煙している本人ばかりではなく、周りの方々の受動喫煙においても、大きな問題があります。

受動喫煙のある方はない方にくらべて、肺がんのリスクが1.3倍になること、受動喫煙による死亡が肺がんで2,500人、虚血性心疾患や脳卒中を含めると約15,000人にもなることが報告されています。

もちろん、まずは禁煙が大切ですが、受動喫煙の機会を減らすことも重要です。東京都がん対策推進計画(2次改定:2018年3月改定)では、喫煙率を減らし、受動喫煙をなくすことに取り組んできました。

先日のがん対策の会議資料では、成人(20歳以上)喫煙率は平成28 年18.3%(男性28.2%、女性9.3%)だったのが、令和4年ではそれぞれ13.5%(20.2%、7.4%)と減っています。

また、受動喫煙の機会として、飲食店は平成22年48.3%が令和5年24.2%、職場ではそれぞれ、37.8%から5.2%に減っていました。

しかし、これは十分ではありません。

最近は、道路に吸い殻が落ちているのはあまり見なくなったと思います。しかし、ある喫煙所を覗くと、すごい煙で満ちているように見えました。

水タバコは早期にニコチン依存症の可能性

私はよく知らなかったのですが、電子タバコや水タバコというのがあり、最近、若者の間に水たばこが人気を高めているらしいのです。

水タバコは、水を通して煙を吸う喫煙方法で、さまざまな香料(フレーバー)を加えたたばこが使用されるようです。〝シーシャ〟とも呼ばれ、まったりとくつろげると、とくに若者や観光客に人気があるらしいのです。

水タバコの煙には、タバコと同じようにニコチン、一酸化炭素、タール、重金属、発がん性化合物などの有害物質が含まれ、水を通すことでこれらの物質が除去されることはなく、有害物質の多くは直接吸入されるのです。また、水タバコでは、早期にニコチン依存症になる可能性があるようです。

水タバコの使用は、肺機能の低下や慢性的な咳、気管支炎、肺感染症のリスクが増加します。水タバコでは、肺がんなどのがんのリスクが増えるばかりではなく、歯肉炎、歯周病のリスクも増します。

さらに、水タバコは、人から人へと回し飲みされることにより、感染症のリスクも高まるのです。水たばこの正確な情報の提供、教育などが必要と思いました。

愛煙家には、厳しいことかも知れませんが、タバコは体に良くないのです。

50年ほど前ですが、義兄と同じ部屋に泊まったとき、愛煙家の彼は、布団に入ってからも枕元で喫煙していたのを思い出します。寝タバコは、がんだけではなく火災のリスクも高めます。彼は、15年ほど前、肺がんで亡くなりました。

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