腫瘍内科医のひとりごと 162 男性もHPVワクチンを!——予防できる子宮頸がん

佐々木常雄 がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
発行:2024年6月
更新:2024年6月

  

ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数

子宮頸がんは子宮の入り口(頸部)にできるがんです。

日本では、年間約1万人が罹患し、約3,000人が亡くなっています。子宮頸がんの90%以上がヒトパピローマウイルス(HPV)によるとされ、性交で感染することがわかっています。

HPVに感染してから子宮頸がんになるまでは、数年から数10年と考えられています。またHPV感染は男性でも、尖圭(せんけい)コンジローマ(HPVの6、11型などが原因で性器周りに小さな尖ったできものができる良性腫瘍)、陰茎がんなどを起こします。

2022年よりHPVワクチンの定期接種が再開

HPVの感染を防ぐワクチン接種はすでに100カ国以上で行われています。日本では2013年4月に12歳~16歳(小学6年~高校1年に相当)の女子に対し、無料の定期接種として「積極的勧奨」とされていました。

ところが、接種後に体の痛みなどさまざまな症状(有害事象)を訴える報告があり、厚労省は同年6月に定期接種を維持しながら、積極的勧奨を中止しました。ただ、接種後に起こるすべての症状の中で、本当にワクチンの副反応によるものかの判断が難しい例もあったようです。

厚労省は2021年11月の検討部会で、最新の知見では改めてワクチンの安全性について特段の懸念が認められないことが確認され、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると認められ、「海外の大規模試験から子宮頸がんの予防効果が示されている」としました。そこで、HPVワクチン接種の積極的勧奨を2022年4月から再開することを決めました。

積極的勧奨とは、厚労省のホームページによると「市町村が対象者やその保護者に対して、標準的な接種期間の前に、接種を促すハガキ等を各家庭に送ること等により積極的に接種をお勧めする取り組み」としています。

令和4年度(2022年)から2価、4価のHPVワクチンの接種勧奨が再開されるとともに、積極的勧奨の中止により接種機会を逃した女子については、令和4年度から3年間、定期接種と同様に接種を受けることができる「キャッチアップ接種」が実施されることとなりました。また、令和5年度(2023年)から、より幅広い種類のHPVに対応した9価HPVワクチンの定期接種も開始されました。

男子へのHPVワクチン接種も必要

現在、HPVワクチンは小学6年生から高校1年生の女子は定期接種の対象で、無料で接種できます。小学6年生から高校1年生が対象なのは、ワクチン摂取時にHPVに感染していないことが前提だからです。

一方で、このワクチンを男性が接種することで、性交渉による感染から女性を守る効果だけではなく、男性の中咽頭がんや肛門がんなどの予防につながるとされています。

HPVワクチンについて、現在、男性では任意予防接種のため、全額自己負担でおよそ5万円かかります。その接種費用を東京都中野区に続き品川区では、4月1日から全額助成することになりました。対象は区内に住む小学6年生から高校1年生までの男子で、3回分のワクチンを区が指定した医療機関で、無料で接種できるというものです。おそらくこの助成は、さらに広がっていくものと思われます。

子宮頸がん予防に、女子だけでなく、男子もワクチン接種を行うことにより、HPV感染を防ぐことができれば、子宮頸がんの罹患、死亡数は大きく減ることになると思います。

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