腫瘍内科医のひとりごと 165 「1日1回は笑う」条例?!

佐々木常雄 がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
発行:2024年9月
更新:2024年9月

  

ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数

毎日、昼中35℃越えが続いていたら、先日の落雷には驚いた。午後1時頃、少し風が吹いたら、急に辺りが真っ暗になり、雨と雷が襲って来た。

今年の猛暑と大雨

居間にいた私と妻。ひきつづいた3回目の落雷では、すさまじいゴロゴロ、ピカッがまともに我が家に落ちたように感じた。ゴロゴロ、ピカッばかりではなく、ずしんと身体にも響き、テレビが消えた。

私は3階屋上のテレビのアンテナを見にいったが、何も変わりはなかった。しかし、2階の電気が点かない。これでは電気屋さんを呼ぶしかないと思っていたら、2階の安全ブレーカーが落ちているのに気づいた。ブレーカーを上げると電気が点き、テレビも映った。一瞬ではあったが、今まで経験したことのない衝撃であった。

私が、子どもの頃に経験した雷は、午後3時過ぎころ。遠くから、ゴロゴロと音がし、おばあちゃんが部屋に蚊帳を吊って、中に入って凌いだのだが、このような激しい雷はなかったと思う。

入院している方は大丈夫だろうが、こんな日々に、在宅で、通院でがんと闘っている方はどうしているだろうか? 買い物だって大変だ。

翌日は、山形・秋田の大雨で、被害の状況がテレビで報道された。「大雨特別警報」「線状降水帯」などの言葉が続いた。中学・高校生のころ、自転車で回った川の懐かしい名前が次々にでてきた。氾濫しているようだ。

早速、田舎の姉に電話して、無事を確かめた。姉は「日本で一番安全な所と思って住んできたのに……」と話していた。市民の方、警察の方が命を失っている。山形の知事・県議員さんには、早く状況を把握し、しっかりした対策をお願いしたい。

「1日1回は笑う」条例が成立

ローカルな話ばかりで恐縮ですが、確か、数日まえのこと。「1日1回は笑う」という条例が山形県議会で可決されたという。その条例の根拠は、山形大学医学部の「笑う頻度が高いほど死亡リスクが低い」という研究結果を基にしたという。

それは県民約2万人を対象にして実施した研究で、「ほとんど笑わない人はよく笑う人に比べて死亡リスクが約2倍高かった」というもの。

そして毎月8日を「県民笑いで健康つくり推進の日」と定めたという。

しかし、これは人権軽視との反対意見もあったらしい。

実施にあたっては、「個人の意志を尊重し、置かれた状況に配慮するもの」とされているようだ。

この条例には、笑うことが難しい状況に置かれている人の感情を無視しているとして、撤回を求める署名を立ち上げたとの情報もあるとのこと。

県議会での可決で、公布したのは知事だ。

7月10日にあった知事定例記者会見では、県議会の議論についての質問に、「人間の喜怒哀楽は強制されるものではないだろうなと思っている。やや戸惑ったところもある」と答えた。

また「笑いが心身の健康に大変良いことは、いろいろな研究のデータでも示されている。県民の皆様が、安心して笑って過ごしていただけるような県政に、全力を挙げるのは私の役割だと思っている」と述べたという。

なにも悪いこととは思わないし、良いことだと思うが、ただなんとなく、「笑いを条例」で言うことか? と。毎日と日にちを決められても……。がん患者さんの手術など、特別な日だったりすることもあり、なんとなく首を傾げるのは私だけだろうか? 数年後の結果を聞いてみたい。

「1日1回は笑う」=2024年7月5日、「山形県笑いで健康づくり推進条例」(山形県条例題59号)が施行された

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