腫瘍内科医のひとりごと 153 HPVワクチン——気になる子宮頸がん予防

佐々木常雄 がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
発行:2023年9月
更新:2023年9月

  

ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数

AYA世代(15歳から30歳代)の女性の主ながんに、子宮頸がんがあります。このがんは、子宮の入り口にできるがんで、約90%がヒトパピローマウイルス(HPV)感染によるとされ、このウイルスは性交で感染することがわかっています。

日本ではHPVワクチン「積極的勧奨」直後に中止に

HPV感染してからがんになるまでは数年から数十年と考えられ、日本では子宮頸がんに年間約10,000人が罹患し、約3,000人が亡くなっています。

HPVワクチンの予防効果は、10年以上経過しないとわからないのですが、しかし、前がん状態(異形成)のほとんどがHPVウイルスによるものであることがわかっており、ワクチン接種で感染を防ぎ、がんを防ぐことが出来るならば、それに越したことはない訳です。

HPVワクチン接種が、子宮頸がんの最も有効な予防手段なのです。この正しい情報が、接種対象者本人と保護者に伝わらなければなりません。

HPVの感染を防ぐために、ワクチン接種はすでに100カ国以上で行われています。日本では2013年4月に12歳~16歳(小学6年~高校1年に相当)の女子に対し、無料の定期接種として「積極的勧奨」とされました。

ところが、HPVワクチン接種後に体の痛みなどさまざまな症状を訴える報告があり、厚労省は同年6月に定期接種を維持しながら、積極的勧奨を中止しました。

ただ、接種後に起こるすべての症状(有害事象)の中で、それらがワクチンの副反応によるものかの判断が難しい例もあったようです。

9年ぶりにHPVワクチン接種の積極勧奨が再開したが

厚労省は2021年11月の検討部会で、「海外の大規模試験から子宮頸がんの予防効果が示されている」として、子宮頸がんワクチン接種の積極的勧奨を2022年4月から再開しました。

この積極的勧奨とは、厚生労働省のホームページによると「市町村が対象者やその保護者に対して、標準的な接種期間の前に、接種を促すハガキ等を各家庭に送ること等により積極的に接種をお勧めする取り組み」としています。

今年(2023年)、厚労省が、接種対象者本人と保護者にアンケート調査を行ったところ、およそ2,500人から回答を得ました。その中で、HPVワクチンのリスクについて十分な情報がなく、接種するかどうか決められないと思うかどうかを尋ねたところ、「非常にそう思う」と、「そう思う」と答えた人をあわせると半数以上にのぼったそうです。

前がん状態あるいはがん初期で見つかれば、子宮頸部の円錐手術で済むこと、この手術は流産や不妊の原因になる可能性はあるものの、命に関わることはないようです。

また、HPVに感染したかどうか自分自身で検査可能なHPVのDNAを調べるキットはあるのですが、検査時に痛みがともなうため正確に使うのが難しく、改良が必要だと指摘されています。

ワクチン接種対象となる女子は、接種するか、しないかを親と一緒に判断していただくしかないと思います。積極的推奨が再開となった理由を含めて詳細な説明が必要であることと、また、副反応が起こった場合のしっかりした対応を確立することが大切であると考えました。

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