腫瘍内科医のひとりごと 157 コロナで否応なく変化した生活を見直す

佐々木常雄 がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
発行:2024年1月
更新:2024年1月

  

ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数

Aさん(34歳 男性 身長163㎝)のことです。この3年で、体重が10㎏増え、90㎏を越えました。その原因をAさん自身がよくわかっています。新型コロナ流行から、毎日の通勤がなくなり、在宅勤務が続き、ほとんど運動しなくなったこと、そして毎晩のビール量が増えたことでした。

とくに寒い冬は、近くのスーパーに行く以外は外出しなくなりました。3年前までは、電車通勤で、毎日おそらく1万歩くらいは歩いていたと思います。

そして楽しみだったのが、毎週土曜日の夜、近くのテニス教室でした。中級クラスで、美人コーチとの長いラリーや練習試合は楽しく、最高のストレス解消でした。しかし、新型コロナが流行ってから、テニス教室は閉鎖となり、それと同時に、Aさんは運動をしなくなりました。

また、ひとりでの食事、とくに夕食でのビールの量が増え、最近は日本酒も追加するようになりました。

大学先輩の膵がん

昨年末、大学の同じ研究室の先輩で、とてもお世話になったBさんが膵がんになり、入院したことを知りました。お見舞いに行こうと思いましたが、コロナ流行以来、病院の面会は出来ないとのことでした。

先輩の膵がんは、大きな手術だったようでしたが、それでも先日、無事退院されました。

B先輩からの電話での話です。

「膵がんと診断されて入院したときは、覚悟したよ。家内には、『いつ死んでも仕方がない。構わない。息子をよろしく頼む』と言ったけど、やっぱり生きたいと思った。死の覚悟なんて出来ない。当然かもしれないが、いざとなったら、俺は『なんとしても生きたい』と思った。そして元気なときに戻りたいと思ったよ。

でも、がん治療は病院に任せるしかないし、手術は全身麻酔で、意識がないからなんにもわからない。麻酔から覚めたら、体に管がいっぱい繋がれていた。それから、管が抜けるまでの1週間はつらかった。でも助かったよ。

A君、お前、太ったらしいな。酒、飲み過ぎていないか? 太って、酒飲んで、運動もしてないと、メタボになるよ。メタボは、がんになるリスクが高くなるらしいよ。俺みたいながんにならないことだよ。

毎日の習慣は、自分ひとりじゃあコントロールしにくいし、そろそろ、嫁さんもらいなよ。お見合い相手を探すから。でも、あまり太っていると嫌われちゃうよ」

コロナで変わってしまった生活を変える

Aさんは、先輩の熱心なアドバイスもあって、生活を変えようと決心しました。

スマホの歩数計で、1日8,000歩以上、他に家の階段を登り下り、そしてリビングで腕立て伏せを1日5回、課することにしました。そして、夕食のビールは1缶だけにしました。

風呂のときには、毎回体重計にのって、手帳に記録することにしました。いまは、3Kg減りましたが、減量はまだまだこれからです。

生活習慣で予防可能ながんのリスク因子として、喫煙・受動喫煙、過剰飲酒、低身体活動、肥満・やせ、野菜・果物不足、塩分・塩蔵食品の過剰摂取などがあげられています。あてはまる方は改善の取り組みが必要と思います。

幸い先輩は、体調良く過ごされているようです。

Aさんは、春になったら、先輩宅を訪ねる約束をしています。

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