腫瘍内科医のひとりごと 158 チャットGPTを使ってみた——胆のうがん薬物療法

佐々木常雄 がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
発行:2024年2月
更新:2024年2月

  

ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数

昨年暮れから、親しい友人の家族の方が胆のうがん、がん性腹膜炎と診断されたと聞きました。胆のうがんは、肝臓と膵臓の間にある肝臓がつくった胆汁をためる胆のうという消化器官にできるがんです。

ある病院でシスプラチン(C)+ジェムザール(G:一般名ゲムシタビン)+イミフィンジ(一般名デュルバルマブ)の併用療法を受けているそうです。私は患者さんにお会いしたことはないので、確かなことは言えませんが、ベストな治療法と思いました。

進行性胆のうがんの薬物治療

進行した胆のうがんの薬物療法は、一般的にはG+TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)、あるいはC+G+TS-1 ですが、TS-1のかわりに免疫チェックポイント阻害薬(ICI)のイミフィンジが加わった治療法です。ですから、もし効果がないときは2次治療としてTS-1が残っています。

胆のう・胆道がんは、最も薬物療法が効き難いがんのひとつで、以前は、第1選択としてフッ化ピリミジン系の薬剤(カペシタビン、TS-1など)が使われ、その後ジェムザールが使われるようになりました。さらに併用療法で、生存の延長効果を比較する第Ⅲ相試験が行われています。

免疫チェックポイント阻害薬の出現で、さらなる効果が期待され、抗がん薬との併用療法が標準治療になるのではないかと期待されています。

チャットGPTで調べてみると

私は、いろいろ文献を検索していましたが、この正月に娘夫婦にチャットGPT(生成AI)のやり方を教わりました。

そこで、「胆のうがん」「薬物療法」などのキーワードでチャットGPTに聞いてみました。その結果、チャットGPTが瞬時に回答してくれるのです。驚きです。

しかし、胆のうがんに対してC+G+イミフィンジの治療法については出てきません。イミフィンジは出てくるのですが、胆のうがんでのイミフィンジは出てこないのです。イミフィンジは胆のう・胆道がんに対して2022年12月に保険収載されています。チャットGPTは、たくさんのデータから答えてくれるのだと思いますが、イミフィンジのデータは2022年1月の時点での情報のようです。

もちろん、同じがん、同じステージでも、個々の患者によって選択肢は違うことはたくさんあります。個々の患者の、置かれたいろいろな状況で違ってくる場合もあります。

しかし、チャットGPTは、標準的な治療ガイドラインを確かめる意味でも有用と思いました。また、瞬時に文献検索もしてくれます。その意味でも、本当に便利な時代になったと驚きました。

チャットGPTには、過去のデータが蓄積されている訳ですが、聞き方ひとつで、色々な考え方が示され、それを見て、参考にできるわけです。

しかし、中には、フェイクが含まれていることもあると聞きます。真贋の区別をしっかりできるように、とくによく知らない専門分野であれば、その見分けがつくように、勉強しておかなければならないと思いました。

また、日進月歩の医学の分野で、チャットGPTは、進歩にともなって内容が改訂されているのかも、とても気になりました。AIは機械ですが、それでも相談相手として楽しみたいと思いました。

友人の胆のうがんの患者さん、今の治療法が、効いてくれますようにと祈っております。

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