- ホーム >
- 連載 >
- インターネットで探るがん情報
胆道がんと胆石との関係
「胆石検査」は胆道がんを見つけるのに有用
すわ くにお
東京大学医学部卒業。マサチューセッツ総合病院、ハーバード大学などを経て、帝京大学教授。医学博士。専門は麻酔学。著書として、専門書のほか、『パソコンをどう使うか』『ガンで死ぬのも悪くない』など、多数。
胆道がんと胆石との関係を調べました。(1)胆石が胆道がんの原因となるか(2)胆石症と胆道がんの症状の共通点と相違点(3)胆石が見つかったら胆道がんの検査をすべきか(4)胆石の手術を受ける際には胆道がんを精査すべきか(5)胆石があると胆道がんを見落とすか―などの問題が、思い当たります。
愛知県がんセンターの総括記事は有用性が高い
総括的なものとして、愛知県がんセンターホームページ(HP)記事を紹介します。まず、「胆道とは何か」を説明しています。一般の方には、有用性が高いでしょう。
胆道とは、胆汁を肝臓から十二指腸まで運ぶ管で、肝臓の中を走りながら合流して太くなり、左右の胆管(左右肝管)となり、肝臓の外で1本の胆管(肝外胆管)となり、十二指腸乳頭部で十二指腸に注ぎます。
胆嚢は、肝外胆管に接続して途中に胆汁を蓄え、濃縮する袋です。胆汁は老化した赤血球からつくられ、老化赤血球の代謝産物が肝臓に運ばれ、胆汁となり、胆道をへて十二指腸に注がれます。この物質は消化液としても重要で、便の茶色の元でもあります。つまり、便の色は胆汁の色です。
次が「胆道がんとは何か」で、胆道に発生するがんを、部位によって胆管がん・胆嚢がん・乳頭部がんと分類します。日本では年間約1万人が死亡し、がん死の約5パーセントを占めます。この頻度は世界的に見て高く、男性は第1位(2位はハンガリー)、女性はハンガリーに次いで第2位です(1983-1987年の統計)。男女比は、胆道がんは男性に多く、胆嚢がんは女性に多く、また国内での死亡率は、東高西低で新潟県が男女とも第1位ですが理由は不明です。
胆道がんの発生率も死亡率も年々急増しており、人口高齢化が原因と推察されます。HPでは、「胆石は、胆嚢がんのリスクファクターであり、有症状者でのがん発生は無症状者にくらべて10倍です。胆石が胆管胆嚢粘膜へ直接に、物理化学的、細菌学的刺激を与えてがん発生母地をつくると考えられています」と述べています。
厚生労働省研究班は、胆石症、胆道がんとの関連を研究
次は、国立がん研究センターのHPに掲載されている厚生労働省研究班の研究で、日本全国各地で1993年~2004年までの約11年間に40~69歳の男女約10万人を対象に、胆石症の既往歴と肥満指数に焦点を当てて分析しました。観察期間中に、235人(男129人、女106人)が胆道がんになり、胆道がんを胆嚢がんと肝外胆管がんに大別して検討すると、胆嚢がん93人(男30人、女63人)、肝外胆管がん142人(男99人、女43人)でした。
胆石の既往があるグループの胆道がんリスクは、既往のないグループの2.5倍で、とくに女性で3.2倍と高値でした。胆嚢がんは女性に多く、肝外胆管がんは男性に多いのは従来言われている通りで、確認できました。胆石の既往のあるグループでは、既往のないグループに比べ、胆嚢がんのリスクが3.1倍、肝外胆管がんのリスクが2.1倍高いと算出されました。
胆石の既往による部位別リスクは、男性では胆嚢がんだけでしたが女性では双方関連があり、女性では肝外胆管がんリスクがとくに高いと判明しています。肥満指数は、胆道がん全体では関連なしでしたが、肝外胆管がんでは肥満者のリスクが高くなり、結局「肥満は単独で肝外胆管がんのリスク」と結論されました。胆石で胆道がんが増えるのは、胆石によって細胞が傷つき、炎症が起こり、がんが発生すると推察しています。
癌研究会は症状と検査、治療も説明
癌研究会のHPは、症状・検査・治療を順序よく説明しているのが特徴です。症状は、胆道がんでは胆汁の流れが妨げられ、黄疸があらわれるので、この黄疸で診断されるのが現状と述べます。他に、右上腹部の鈍痛や細菌感染による発熱もでます。胆石・胆管結石と同様の症状が出現して区別ができにくく、発生部位の関係で、胆嚢がんでは進行して症状がでるのが特徴です。
黄疸での早急な受診と検査を薦め、腹部超音波検査で胆管の拡張やがんそのものが見つかるので有用としています。ただし、胆嚢がんは胆石を伴うことが多く、その上に胆嚢全体を満たす結石ががんの存在を見つけにくくする傾向が否めません。
黄疸の原因には、急性肝炎その他がんでない病気もたくさんありますが、身体に重大なことが起こっているので診察が必要としています。
治療では、胆管がんの手術は部位により術式が異なり、肝臓の中にある胆管のがんなら、胆管とともに肝臓の一部も切除します。肝臓の外にある胆管だけのがんで膵臓とリンパ節転移がない場合は、胆管だけ取る手術です。一方、膵臓の中にある胆管がん(膵内胆管)は、膵臓・胃・十二指腸などを一緒に摘出する大手術になります。
胆嚢がんの早期がんでは、腹腔鏡手術ですむ場合もありますが、進行がんなら胆嚢と肝臓の一部・リンパ節も切除します。乳頭部がんも非常に早期なら、内視鏡と電気メスを使ってその部分切除で済みますが、それほど早期に見つかるのは特別運のよい条件でしょう。一般には、膵臓・胆管・胆嚢・胃・十二指腸などを一緒に摘出します。
癌研究会では、胆管がんや胆嚢がん手術で肝臓を広く摘出する場合、術前に切除側の肝臓を栄養する血管(門脈)をつぶして、残すほうの肝臓を大きくする処置(経皮経肝門脈塞栓術)を行って、術後の肝機能の低下を未然に防ぐ工夫をしていると説明しています。
肝転移で手術ができない場合、全身への抗がん剤投与や、肝臓内の転移に対して、それを栄養する動脈(肝動脈)から直接抗がん剤を投与する方法(肝動注療法)を施行し、胆管がんには放射線治療も併用します。
「さいごに」として、胆道に閉塞があれば手術でも内科的治療でも黄疸をとる処置が必要で、内視鏡的に乳頭部からアプローチする内視鏡的逆行性胆道ドレナージと体外からアプローチする経皮経皮胆道ドレナージがあり、いずれの処置も合併症が発生して、その合併症の治療に難渋する可能性があると述べています。
この他に、「健康の森」HPと「高齢者の生活習慣病」のHPも胆道がんをわかりやすく解説していました。
胆石が胆道がんの原因となるか、には「10倍増加」という記述がいくつもありますが、上に挙げた厚労省研究の実数は2~3倍で、うわさほどではありません。胆道がんは、症状も検査も胆石と共通します。胆石のエコー検査は、そのまま胆道がんの検索にもなります。胆石手術時には、胆道がんも当然ある程度は精査します。胆石の存在は胆嚢がんを見つけにくくしますが、「胆石検査」が胆道がんを見つけるのに有用で、胆道がん発見のきっかけになる意味では有利かもしれません。