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がんと玉川温泉
北投石は世界で玉川温泉と台湾北投温泉にしか産出しない
すわ くにお
東京大学医学部卒業。マサチューセッツ総合病院、ハーバード大学などを経て、帝京大学教授。医学博士。専門は麻酔学。著書として、専門書のほか、『パソコンをどう使うか』『ガンで死ぬのも悪くない』など、多数。
玉川温泉へのアクセスと交通事情
インターネットで調べる際は、ただ「玉川温泉」で検索すると同名の温泉が日本中に他にもある点に注意して下さい。「秋田県」と加えれば無難です(グーグルマップ)。有名な地名との関係では、八幡平の真西10キロメートル、田沢湖から北北東へ約20キロメートルくらい(いずれも直線距離)でしょうか。
アクセスは、秋田新幹線田沢湖駅からバスで1時間強。これがメインルートでしょう。他に、花輪線の鹿角花輪駅や八幡平駅からのバスもあります。車の場合、東北自動車道の盛岡ICから国道46号で田沢湖駅近くまで行き、そこから国道341号で北に向かいます。
国道341号線は、田沢湖駅付近から鹿角市まで続く当温泉への唯一のアクセス道路です。
しかしここは豪雪地帯で、冬季は田沢湖付近から鹿角市八幡平、切留平の間が長期に通行止めになります。田沢湖玉川温泉はバスのみがほぼ通年通行可能ですが、年間のかなりの期間は一般車の出入りを禁じています。鹿角市側からは完全な不通期間が長く、2008年は数カ月不通でした。距離的には、田沢湖駅からも鹿角市側からもほぼ同じくらいなのに、後者は標高1000メートルほどの峠を越える故でしょう。田沢湖駅からのバスも、冬季は午後0時半発が最終です。
玉川温泉と新玉川温泉
標高800メートルの高地にあり、玉川温泉と新玉川温泉の2つにわかれ、両者は1キロメートルほど離れて、いずれも国道341号線から少し入り、双方を直接つなぐ道路もあります。国道341号線にそって流れる玉川は、温泉の下で玉川ダムで堰き止められて宝仙湖という大きな人造湖をつくり、流れて角館から大仙市(巨大花火で有名な以前の大曲市)の西で雄物川に合流して秋田市で日本海に出ます。
玉川温泉は古い歴史のある谷あいの1軒宿、一方、新玉川温泉は歴史が新しく宿が2軒あるようです。宿泊の予約は容易ではないようで、インターネットでもその辺をブログで議論しています。もっとも、下の田沢湖などに宿泊して温泉にだけ通うのも可能です。温泉宿の案内には、いずれも「当宿は観光宿ではなくて湯治宿で、食事は提供するけれども豪華なものではない」と断っています。
そのほかに、20キロメートルも離れた田沢湖付近や田沢湖高原やもっと遠い別の町でも「玉川温泉」を名乗っている例もあるので間違えないように注意して下さい。
泉質は二酸化炭素を含むビールのように軽い発泡性があり、弱酸性ないし強酸性で、味は場所によって異なり、塩分が濃くてショッパイほかに、各種ミネラルや金属によって渋みや苦味も記述されています。
源泉が98度と高温なので、ぬるいことはありません。特徴は後に述べる放射能です。
玉川温泉での入浴の仕方
温泉の楽しみ方は全国各地各様で、屋内や露天の風呂での入浴のほかに、温熱浴・打たせ湯そのほかいろいろあります。玉川温泉では「岩盤浴」というのがとくに有名ですが、これとても全国各地で類似の使い方が知られていて、現在ではここだけの特産ではありません。最近は、東京も含めて大都市に「岩盤浴場」が数多くできているくらいです。
サウナが高温の乾燥空気を使うのに対して、岩盤浴は温度はせいぜい50度程度と低いけれども湿度が高い「蒸し風呂」で、その環境で高温の岩盤の上に寝そべって身体を温めます。岩盤温度も50度前後で、皮膚直接ではなくてタオル・毛布・ムシロなどを敷き、衣服は着ける場合と着けない場合とがあり、時間は数10分程度、人によっては最高数時間も繰り返すようです。
うつ伏せになってお腹側を5分温めてから、仰向けになって背中を10分温めるというのが1単位でこれを繰り返すとあります。当然大量に発汗しますから、これに応じた水分摂取に注意して下さい。
この温泉では「北投石」というのが有名で、これは温泉成分が沈殿して層状に堆積した石ですから、鍾乳石か「湯の花」に似ています。成分は硫酸バリウムと硫酸鉛で、微量のラジウム等の放射性元素を含んで放射能がある点が特徴で、昔から「薬石」とされ、以前は渋黒石と呼びました。「渋黒」はこの土地の沢の名前なのに対して、「北投」は台湾の北投温泉にちなむものです。
この種の石は、世界でも台湾北投温泉とこの玉川温泉からしか産出しないといいます。それで、特別天然記念物に指定されて、採取は当然禁止されていますが、盗掘が後を絶たず2004年には摘発された事例もあると記述されています。現在、「北投石」として商品として頒布されているのは、オーストリアのバドガシュタイン鉱石という輸入品で、成分は北投石にかなり類似はしている由です。
鎌田さんの玉川温泉訪問記
本誌でおなじみの鎌田實さんが、実際にこの温泉を訪ねて、「なぜここに全国からがん患者が集まるのか」と題してポイントを探索した文章と写真が載っています。「“奇跡の湯”玉川温泉の至福」というタイトルが付き、鎌田さん独特のやわらかいムードで含蓄に富む記事ですから、これはもう私は紹介を止めて読者の方々がご自分でアクセスして、全文を写真とともに楽しんで頂きたいと感じました。
この温泉は、周辺にいろいろな観光地を控えているので、時間と体力に余裕があるなら是非訪れてください。ただし、雪の深い地域なので季節は限られます。
田沢湖は国道からほんの少しだけ外れるものの、ほとんど通り道といえる場所にある有名な湖です。日本一深くて、最深部は海面より200メートル以上も下……ということを別にしても、美しく、しかも比較的静かな山間の湖です。周囲を歩く道路も一応整備されており、雪がなければ歩けます。
八幡平は1600メートルの高地にある台地で、今は車で近くまで行かれるので、汗をかくことなくトレッキングを楽しめます。一方、烏帽子岳(乳頭山)と男女岳(秋田駒ケ岳)の2つは、田沢湖付近から東へ向かう道路で直接山へ向かい、やや本格的な登山です。しかし、乗り物の終点から頂上までの標高差は比較的小さく、さほど骨は折れません。
玉川温泉付近を含めて、この辺一帯はみごとなブナの大木の林で、しかも世界遺産の白神山地とちがって、案内人なしに歩くことが許されます。
私は、自分の散骨の候補地の1つとしてこの付近のブナ林を考えています。