がんサプリメント
購入の際には科学的根拠の有無に注目

文:諏訪邦夫(帝京大学幡ヶ谷キャンパス)
発行:2008年4月
更新:2013年4月

  

すわ くにお
東京大学医学部卒業。マサチューセッツ総合病院、ハーバード大学などを経て、帝京大学教授。医学博士。専門は麻酔学。著書として、専門書のほか、『パソコンをどう使うか』『ガンで死ぬのも悪くない』など、多数。

好感をもち、信用できそうな記事

サプリメントの記事はことの性質上、内容も質も多彩です。その中から、好感をもったり「信用できそう」という印象を受けたものを最初に出します。

小澁雅亮さんのは「サプリメントはがん治療の3種の神器に続く重要なもの」という大げさなタイトルながら、中身はまともな質疑応答です。「自分は古いタイプの医師」と明言し、昔風の医療の利点も強調しています。1953年に医科大学を卒業した由で、生まれは多分1930年以前、現在80歳前後でしょう。サプリメントについて「医学部で学生に教えられる学問として体系づけ」、「できる限り天然物に近いものができる研究体制が必要」、「サプリメント単独療法には賛成しない」など明快で論理的主張で、「神がかり」的内容ではありません。メインタイトルもサブタイトルも、実際の質疑の内容より誇張しており、作文した担当者のセンスが疑問です。

牧瀬忠廣氏の解説は20種類の薬品群を詳しく解説して、分量が10万バイト以上と新書1冊分ほどです。内容の信用度は、私(諏訪)には自信がありませんが、誠実な解説と主張です。

項目の一部を紹介すると、パクリタキセル含有杉(タキソール)・ラクトフェリン・サリドマイド・きのこ系サプリメント・ささの葉・海藻の多糖類・キチンとキトサン(カニ・エビの甲羅や昆虫の外皮)・ミネラル(セレン、亜鉛、モリブデン、マンガン、ゲルマニウム)・アミグダリン(別名リートリル)などで、リストだけでもおどろくほど多彩なものをしっかり解説しています。

きのこの項目はさらに細分して、冬虫夏草やアガリクスなど4万バイト近くと全体の3分の1を超え、とくに充実しています。

「高価な品は不要で、スーパーで売っている安いきのこをいろいろ混ぜてスープに」と自身の実践法を述べて、「特定の商品を推薦する」態度を明らかに避けています。

明快な評価を加えている国立がん研究センターのページ

サプリメント関係の記事で、解説だけでなくて「明快な評価も加えて」いるものとして、「がんの代替療法(健康食品やサプリメントなど)」という国立がん研究センターの頁を紹介します。個々の物質や治療法について、有効性と安全性を中心に詳しく説明しています。まとめの表3はがんセンター自身の研究ではなく、ハーバード大学の発表の引用です。いかにもアメリカらしい「乳がんに対する大豆サプリメント」や「ハーブ製品」といったふつうのサプリメントの他に、「乳がん」前立腺がんに対する脂肪制限」「マクロビオティック食=野菜・玄米中心」という食事療法、「ビタミンA・ビタミンC・ビタミンEサプリメント」といった栄養剤、鍼灸・心身療法・マッサージも含まれます。

「明確に有効」という評価は1つもありません。せいぜい「容認して経過観察」で、「有効の証明はないが、まあ害はなさそう」のレベルです。ところが、ビタミンAサプリメントは「適切に計画されたランダム化比較試験による有効性の根拠」が存在する一方で、「生命に関わるか恒常的な障害をもたらす有害作用の報告があり、因果関係が確立」しています。ですから「容認」ではなくて、「反対して経過観察」つまり「健康に悪いことは明らかだ。『止めろ』とは言わないが、注意しろ」との評価です。この種のマイナス評価群に、ビタミンC・乳がんに対する大豆・前立腺がんに対するPC-SPESというハーブ製品が分類されます。

サプリメント購入には科学的根拠の有無に注目

次にニュースと書籍を紹介します。「サプリメント購入には科学的根拠の有無に注目」は、日本の国立医薬品食品衛生研究所が安全性試験をしたところ、特定のアガリクス商品に発がん促進作用を確認したので、厚生労働省がその製品の販売停止と回収を命じ、その余波で他のアガリクス製品も売り上げが激減したという報道です。

「アガリクスは抗がんサプリメントの代表格」だっただけショックが大きく、さらに加えて「アガリクス製品の抗がん効果の証明は、実は何もなくて」、乱数割り付けによるコントロール臨床試験で有効性を証明した報告は存在しないと念を押します。有効の証明は、動物実験で抗がん作用があった報告と、臨床の場でがんの進行が抑制された例がある(対照群なし)という症例報告のみとか。

米国発「ビタミンサプリメントが消化管がんのリスク高める」との記事は、「ビタミンと抗酸化サプリメントの服用者は100万人以上だが、英国医学誌「ランセット」の研究では、サプリメント服用者のがん死亡リスクが非服用者より高い」と述べています。17万人以上の試験で、「βカロテンとビタミンA、C、E含有サプリメント服用者が食道・胃・膵臓・肝臓・大腸のがんで死亡する可能性が、プラセボ服用者より高い。βカロテン+ビタミンAの組み合わせとβカロテン+ビタミンEの組み合わせが特に危険、ただし有害作用の原因は不明」です。

ついでに「ビタミンサプリメントにがん予防作用の証拠はなく、米国対がん協会と米国立がん研究所は推奨しない。消化管がんリスク低減に確実に有効なのは、検診・禁煙・適切な体重維持のみ」と結論します。

本はキャンサーネット・ジャパン編『抗がんサプリメントの効果と副作用 徹底検証!』(三省堂)と福田一典著『決定版!抗がんサプリメントの正しい選び方、使い方』(南々社)。前文と目次で見る限り真面目な内容ですが、インターネットで直接読めるわけではなく、それ以上の評価は不可能です。

内容に疑問を抱いた記事多数

内容に疑問を抱いた記事が大量にありました。あるものはコピーをまったく許さず、「まじめに読ませる気がない」と解釈しましたが、内容も気に入らず安心してパスしました。

水の話が多数登場します。意味不明の「超」という字をちりばめた記事、「深層水」(海の深いところでとった水)で、知床でとった水とは世界遺産登録名の利用でしょう。もちろん、他の地名も多数登場します。まともに見えて目次を開いたら、生命保険・出会いと結婚情報・恋愛占いなど多彩な商社で、その種の会社の広告する「がん治療薬」を信用する気に私はなれません。そうは言いながら、検索の上位に出てきたものに関する限り、「いんちき」的なものが当初の予想よりはずっと少なくて安心しました。

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