骨腫瘍といっても組織型はさまざま
一般の方にもわかりやすいサイトで理解を深めよう

文:諏訪邦夫(帝京大学八王子キャンパス)
発行:2007年11月
更新:2013年4月

  

すわ くにお
東京大学医学部卒業。マサチューセッツ総合病院、ハーバード大学などを経て、帝京大学教授。医学博士。専門は麻酔学。著書として、専門書のほか、『パソコンをどう使うか』『ガンで死ぬのも悪くない』など、多数。

メルクマニュアル家庭版

上位にランクインした「メルクマニュアル家庭版」は、「はじめに」、「原発性悪性骨腫瘍」、「転移性骨腫瘍(骨転移)」に分かれています。

「はじめに」では、骨の腫瘍の多くは良性腫瘍で、悪性腫瘍はまれな点、次に骨腫瘍には原発性(最初から骨に生じた腫瘍)と転移性(悪性腫瘍で、他の臓器に生じたがんが骨に転移)とがあると説明しています。このうち悪性腫瘍に関しては、小児期の大半は原発性、成人の場合の多くは転移性など年代別の特徴についてもきちんと触れています。

「症状」のなかでは、「骨の痛み」の頻度が高く、程度も激しいと述べています。「痛みは歯痛に似るが、歯痛も実は骨の痛みの1つ」と関連づけ、イメージしにくい骨の痛みの理解を促しています。次に、「しこりと病的骨折」を挙げ、後者を「腫瘍で骨がもろくなり、わずかな力で骨折」と説明します。

X線、CT検査、MRI検査の役割に関しては次のように説明しています。関節・腕・脚の痛みが持続する場合にはX線撮影をしますが、X線では細胞の異常増殖は確認できても、腫瘍が良性か悪性かの判断はできません。そこで、さらにCT検査やMRI検査を行い、腫瘍の正確な位置や大きさ、性質の情報を得ます。

これらの検査で診断が確定することは稀で、確定診断をするには、腫瘍組織のサンプルを採取して顕微鏡下で調べる検査(生検)が必要になります。腫瘍に針を刺して一部吸引して細胞を調べる「吸引生検」を行います。生検に使用する針が細いため、採取した細胞のすぐ隣にがん細胞があっても正常な細胞だけを採取してがんを見逃される可能性を指摘し、「診断に必要な検体を確実に採取するため、ときには外科的な手術による生検が必要になることがある」と述べています。以上が「はじめに」つまり序論です。

「原発性悪性骨腫瘍」では、多発性骨髄腫・骨肉腫(骨原性肉腫)・骨の線維肉腫と悪性線維性組織球腫・軟骨肉腫・ユーイング腫(ユーイング肉腫)・骨の悪性リンパ腫(細網肉腫)などを頻度の高い順に、疫学的特徴、好発部位と症状、治療法を解説しています。このうち、多発性骨髄腫は本欄35回ですでに扱いました。

「転移性骨腫瘍」は、乳腺・肺・前立腺など体の他の部位にできた腫瘍が骨に転移したものです。普通は、ひじや膝よりも末梢側には転移しません。脊椎、肋骨、骨盤骨、腰椎といった大きな骨に好発します。もとのがん(原発がん)が見つかる前に、症状から「転移性骨腫瘍」が発見されることがある点、疼痛と病的骨折が発見のきっかけになる点、生検の病理所見がもとのがんを診断する手がかりとなる点を説明しています。

もとのがんの種類によって適する治療が異なります。化学療法・放射線療法・化学放射線併用療法といった治療法がありますが、どの治療も適さないものもあります。骨の固定手術で骨を安定させて病的骨折を防げる場合もあります。

「メルクマニュアル家庭版」の骨腫瘍の解説は、全体として読みやすく要領よくまとまって必要十分の情報を載せ、検索のトップに登場するのも当然との印象を受けました。

骨腫瘍画像ライブラリとお馴染みの百科事典

北海道がんセンターの整形外科が、「骨腫瘍画像ライブラリ」という名前で、骨腫瘍のX線像を60症例ほど紹介しています。「整形外科医の方へ」と指定していますが、専門外の医師の私にもよくわかり、関心の強い方なら医療関係者でなくても参考になりそうとの印象を抱きました。

「骨腫瘍について」という米子医療センターの記事も、項目を要領よく分類して解説しています。病院のホームページの「がんの話」という各種がんの解説の1つに骨腫瘍があります。「腫瘍類似疾患(*1)」という分類をつけている点がメルクマニュアルと違います。

今回検索した「骨腫瘍」とは無関係ですが、米子医療センターの「セカンドオピニオン外来」のページにある案内には「是非前の医師から詳しい情報を貰うように。さもないと一般的なお話しかできないのでムダ」と警告しているのは親切だと感じました。

健康保険の効かないセカンドオピニオンは、初回の費用が1万500円/1時間、以後30分毎に5000円と、決して安いものではありません。

*1 限りなく骨腫瘍に似たもの

「イヌ骨肉腫」の項目が興味深い

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の導入では、「骨肉腫は多発性骨髄腫と悪性リンパ腫を除く骨の悪性腫瘍のうち、最も発症頻度が高いもの」で、「単一病変ではなく、いくつもの亜型を含む。長幹骨の骨幹端が好発部位で、50パーセントが膝周辺に発生」などが書かれています。ここの目次には、罹患率、病態、徴候、原因、治療法、予後、イヌ骨肉腫、外部リンクの順序で、明確な項目が設けられています。

「イヌ骨肉腫」の項目が風変わりでした。骨肉腫はイヌにも発症し、四肢の長い犬種(*2)の中年の犬に好発するとしています。イヌのほうがヒトより肺転移を起こしやすい点が大きな違いとして指摘されています。同名の疾患で、ヒトとイヌの違いを対比している点、興味深い情報で感心しました。

骨腫瘍の生存率については、大阪医療センターの「骨・軟部腫癌(整形外科)」が詳しい情報を出しています。各疾患の代表的な治療経過のほか、生存率については、「骨腫瘍」の分類を細分化して紹介しています。骨肉腫の最近の治療成績は、アメリカの代表的ながんセンターで、5年生存率がおよそ78パーセントに対し、大阪医療センターでは16例の実績で83パーセントと良好な成績であると述べています。

同様の報告を千葉県がんセンターも掲示しています。骨肉腫46例で5年生存率は78パーセント、10年生存率も71パーセントと好成績です。この施設では他の骨肉腫(「メルクマニュアル家庭版」を参照)の治療成績も、脂肪肉腫円形細胞型以外はいずれも良好でした。

転移性骨腫瘍に関しては生存率のデータがみつかりませんでしたが、原疾患の種類や広がり方で大きな差が出ることがわかりました。

*2 グレイハウンドやジャーマンシェパードなど

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