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GSL療法という新たな治療法も臨床試験中

治療選択肢が増え、切除不能膵がんは個々に応じた治療の時代へ

監修●伊佐山浩通 東京大学大学院医学系研究科消化器内科学准教授
取材・文●伊波達也
発行:2015年10月
更新:2015年12月

  

「患者さんに応じた治療選択も可能になってきました」と語る
伊佐山浩通さん

ここのところ立て続けに新たな治療薬が登場し、治療選択肢が増えた切除不能の膵がん。一昨年(2013年)にFOLFIRINOX、昨年(2014年)にアブラキサンが保険適用されたことで、切除不能膵がんは次の治療ステージに入った。

膵がん治療は化学療法が軸に

切除不能の膵がんの治療といえば、10年ほど前までは、ジェムザールという薬に頼り切りだった。その後2006年にTS-1が登場し、タルセバも加わったころから、2剤併用による治療や、1次治療、2次治療と、治療を展開することができるようになってきた。

とはいうものの、切除不能膵がんの中でも、遠隔転移例については、なかなか効果が認められなかった。

そんな中、2013年12月に、FOLFIRINOXという4つの抗がん薬の組み合わせによる治療法の登場で、遠隔転移例の延命効果が期待できるようになってきた。さらに14年12月には、アブラキサンが承認され、ジェムザールとの2剤併用により、新たな治療選択も増えてきた。

「膵がんは、切除可能な人は全体の2割程度です。その中で、手術で根治に導ける人は5%程度と厳しいのが実状です。ですから、昨今、切除可能な膵がんにおいても、手術に化学療法を組み合わせていかに治療成績を上げるかが課題になっています。

また、たとえ手術ができたとしても、手術によって逆に体力を低下させてしまい、化学療法に耐えられないという人もいて、そういった人たちには最初から化学療法を行ったほうが良いのではという考え方もあります。このように、膵がん治療は今や化学療法が治療の軸になってきた感があります」

そう話すのは、東京大学大学院医学系研究科消化器内科学准教授の伊佐山浩通さん。

「ここ1~2年の切除不能膵がんのトピックスは、何と言っても、FOLFIRINOXやジェムザールとアブラキサンの併用療法などの治療法が保険適用されたことです。私は、この切れ味のいい2つの治療法をアグレッシブレジメン(積極的治療法)と呼んでいますが、切除不能膵がんは、この2つの治療の登場により、希望的観測を持ちながら治療ができるようになってきました」

ジェムザール=一般名ゲムシタビン TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム タルセバ=一般名エルロチニブ FOLFIRINOX=5-FU+ロイコボリン+イリノテカン+エルプラットの4つの抗がん薬を組み合わせた治療法 アブラキサン=一般名ナブパクリタキセル

切れ味のよいFOLFIRINOX

現在の切除不能膵がんの場合の化学療法戦略を概観していくと、局所進行例から再発転移例まで、治療にグラデーション(段階的変化)が出てきたと伊佐山さんは説明する。

「切れ味のよい、アグレッシブレジメンの最右翼として期待できるのが、FOLFIRINOXです。体力のある若い患者さんや全身状態(PS)の良好な人には、切れ味がよく効果が期待できる薬です」

FOLFIRINOXとは、5-FUとロイコボリンとイリノテカン、エルプラットの4つの薬剤を組み合わせたもので、治療初日に4剤を投与し、2~3日目に5-FUを持続投与する。2週間で1コースという方法だ(図1)。中心静脈投与のため、鎖骨の皮下に手術で薬を投入するポートを留置する必要がある。

図1 FOLFIRINOXの投与スケジュール

mFOLFIRINOXレジメンでは、5-FU急速静注を省いたり、イリノテカンを減量したレジメンが行われる

有効性が示された海外の臨床試験では、ジェムザールとの比較で、全生存期間(OS)中央値では11.1カ月と6.8カ月。無増悪生存期間(PFS)は6.4カ月と3.3カ月。全奏効率(ORR)では31.6%と9.4%と、いずれもジェムザールを上回る治療効果を証明した。国内の遠隔転移例を対象にした第Ⅱ(II)相試験でも奏効率は38.9%だった。

確かに効果の〝切れ味〟はいいのだが、一方では、骨髄抑制など、副作用の強さ故に、治療を完遂できる人が少ないというのも実情だ。そこで、現在では、FOLFIRINOXのモディファイドレジメン(mFOLFIRINOX)という、投与の仕方や用量を調節する方法が、臨床試験などで模索されている。

「FOLFIRINOX療法は副作用が出現すると、まずは初日に行う5-FUの急速静注を中止するという計画になっています。国内の臨床試験では多くの方の5-FU急速静注が中止になり、5-FUの総投与量は予定の17%に減少しましたが、効果は海外の試験と変わりませんでした。そのため5-FU急速静注を最初から省こうという考え方が1つです。それからイリノテカンの量を180㎎/㎡から120~150㎎/㎡くらいに減量しようという考え方です。これまで行われた日本でのイリノテカン投与量と比較するとはるかに多いからです」

伊佐山さんたちは、慎重に適応を決め、治療に耐えられそうな人には5-FU急速静注を省かないオリジナルレジメンで行い、それ以外の方、あるいは既に化学療法を経験された2次治療の方にFOLFIRINOXを行う場合はモディファイドレジメンを施行しているという。

「私たちのところで、FOLFIRINOXで治療ができる人は、全体の10~15%くらいです。その人には治療効果も考えて、なるべくオリジナルレジメンで受けてもらっています。主に40~50代のお元気な方ですね。ただし、元気な方でも薬の影響がすごく出てしまう人もいるので注意が必要です。それから患者さんのご希望も重要です。元気な人でも〝そんな諸刃の剣みたいな治療は嫌だ〟という方もいらっしゃいます。患者さんの状態とご希望を合わせて治療法を決定するようにしています」

5-FU=一般名フルオロウラシル ロイコボリン=一般名レボホリナートカルシウム イリノテカン=商品名カンプト/トポテシン エルプラット=一般名オキサリプラチン

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