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25年ぶりに生存率改善。 悪性リンパ腫の抗がん剤投与間隔短縮療法


発行:2005年3月
更新:2013年4月

  

25年ぶりに生存率が改善された


ドイツのサーランド大学

抗がん剤治療の治療効果を上げる方法は世界中で開発されています。その中から、最近、抗がん剤の用量を下げずに、投与間隔を短縮する投与方法で治療効果の上がることが、悪性リンパ腫に対する臨床試験で確認されました。悪性リンパ腫治療において25年ぶりの画期的な出来事です。

このことを臨床試験で確認したのはドイツ南部の町ホンブルクにあるサーランド大学医学部内科教授の ミッヒャエル・フロインドシューさんです。フロインドシューさんは、悪性リンパ腫の分野で最も積極的に活動している研究グループの1つであるドイツ高悪性度非ホジキンリンパ腫研究グループ(German High-Grade Non-Hodgkin’s Lymphoma Study Group:DSHNHL)の会長でもあります。同グループでは、年間3000例の治療実績があり、その中で今回、この臨床試験を行いました。

悪性リンパ腫は、白血球の中のリンパ球ががん化する病気で、リンパ節がはれたり、腫瘤(こぶ)ができます。ホジキンリンパ腫(ホジキン病)と非ホジキンリンパ腫とがありますが、日本では前者は10パーセントと少なく、大半は非ホジキンリンパ腫です。その非ホジキンリンパ腫は、病気の進行のスピードによって、進行の遅い低悪性度リンパ腫、進行の速い中悪性度リンパ腫、高悪性度リンパ腫の3つのタイプに分かれます。大まかに言うと、低悪性度リンパ腫は年単位、中悪性度リンパ腫は月単位、高悪性度リンパ腫は週単位で進行するものです。

がんの治療法は、手術、抗がん剤治療、放射線治療が3大療法ですが、悪性リンパ腫に対しては、主に抗がん剤治療と放射線治療が行われます。なかでも重要なのが抗がん剤治療です。

投与量を上げる方法はいずれも失敗


サーランド大学医学部内科教授の 
ミッヒャエル・フロインドシューさん

――中高悪性度非ホジキンリンパ腫の標準療法といえば、エンドキサン(一般名シクロフォスファミド)、アドリアシン(一般名ドキソルビシン)、オンコビン(一般名ビンクリスチン)、プレドニン(一般名プレドニゾロン)の4剤併用のCHOP療法です。このCHOP療法の投与間隔を縮める投与法を悪性リンパ腫に応用するアイディアはどこから生まれたのですか?

教授 悪性リンパ腫の抗がん剤治療では、リスク別に治療法が確立しており、中高悪性度非ホジキンリンパ腫では、過去25年間、ずっとCHOP療法が標準でした。もちろんこのCHOP療法を凌駕する治療法の探求はいろいろ行われてきました。まず最初に行われたのは、このCHOP療法を、投与量を増量することによって強化しようとする試みでした。ところが、1993年に発表された大規模試験で、投与量を増量しても、毒性が高くなることはあってもCHOP療法以上には効果は上がらないことがわかったのです。

私たちのグループでも、治療3週間後に来院する患者さんの中から、「2週間過ぎた頃までは調子が良かったが、最後の2~3日になるとまた腫れてきます」という声が多く聞かれたのです。

ちょうどその頃、白血球の増殖を刺激する造血因子G-CSF製剤が市販されるようになりました。患者さんに抗がん剤を投与すると感染症に対抗するための白血球がダメージを受けてしまい、命を脅かす感染症のリスクを生ずる場合があります。しかし、G-CSF製剤を投与することで、白血球数を増やしそのリスクを低減させることができます。そこで、抗がん剤の毒性を軽減するためにG-CSFを用いながら、治療間隔を狭めてみたらどうかと考えたのです。

――抗がん剤の投与間隔短縮による効果をどのように検討されましたか?

教授 最初に小規模な予備試験を実施して、治療サイクルの間隔を狭めても大丈夫かどうかの安全性を確認しました。次に、大規模な臨床試験(無作為比較試験)を2件実施しました。中高悪性度非ホジキンリンパ腫で高リスクである60歳以上の高齢患者さんを対象にした試験(NHL-B2と呼ばれる)です。投与間隔を3週間おきに行うCHOP療法(CHOP-21=従来CHOP)と、2週間おきに行うCHOP療法(CHOP-14=短縮CHOP)の2つのグループに患者さんを振り分けて、5年間追跡し、投与間隔を3週間から2週間に狭めて治療成績は上がるかどうかを確かめました。 

投与間隔短縮療法で必要なのはG-CSFの投与

[図1 抗がん剤の投与間隔を短縮した治療の効果を確かめる臨床試験の成績]

投与間隔を短縮したCHOP療法を受けた高齢の患者さんでは、3年生存率も5年生存率も改善された(右グラフ)。
左のグラフは無イベント生存率。グラフ中のCHOEPはCHOP療法にエトポシドを加えた場合の2週間療法と3週間療法。

――試験結果はどうでしたか?

教授 驚きでした。高リスクである60歳以上の高齢患者さんのうち、投与間隔を短縮した患者さんでは、3年全生存率が約20パーセント、5年全生存率も約13パーセント高く、有意な改善が認められました。またリンパ腫の症状が5年間にわたり認められなかった患者さんは、従来CHOP療法では33パーセントであったのに対して、短縮CHOP療法では44パーセントになりました。(図1)

――投与間隔を3週間ごとから2週間ごとに切り替えるうえで、必要なことは何でしょうか?

教授 G-CSFを投与することです。G-CSFを併用せずに2週間ごとの方法をとることはできません。

――支持療法としてはG-CSFだけでいいのでしょうか?

教授 はい。G-CSFを投与すれば、感染症リスクを増大させる抗がん剤の白血球に対する毒性から患者さんを十分保護することができます。

ただし、投与することが重要なだけではなく、正しい投与期間に投与すること。この点がとても重要です。他の試験結果では、抗がん剤の投与日を1日目としてG-CSFの投与を4日目から投与した場合に比べ、2日遅らせて投与を開始したところ、重篤な感染症の割合が増大することがわかりました。ですから、短縮CHOP療法ではG-CSFの投与をきちんと第4日目に開始して10日間投与することをお勧めします。


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