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患者の関わり方や心がまえにより安全性や効果で違いが出る
外来化学療法 患者自己管理のチェックポイント

取材協力:相羽恵介 東京慈恵会医科大学病院腫瘍・血液内科教授
清水哲 国家公務員共済組合連合会三宿病院病院長
岩永智恵子 根津昌枝 同病院看護部
取材・文:黒木要
発行:2007年7月
更新:2013年4月

  
相羽恵介さん 東京慈恵医大腫瘍・血液内科教授の
相羽恵介さん

病院の外来へ通って行う抗がん剤治療が日常化してきている。
入院して行う抗がん剤治療と違い、基本的に自宅で過ごせ、いつもと変わらない生活や仕事ができるが、その一方、患者さんは副作用に気をつけながら、自分で体調を管理していく必要がある。
どのようなことに注意し、どう対処していけばよいのか。
患者さんの自己管理のチェックポイントを挙げてみよう。

雑誌やテレビを見ながら点滴

写真:東京慈恵医大病院の外来化学療法室の受付
写真:東京慈恵医大病院の治療室

上は東京慈恵医大病院の外来化学療法室の受付。下はその治療室内。リクライニング機能のついた椅子は5つ

東京・西新橋にある東京慈恵会医科大学付属病院。2階の点滴治療室の18のベッドのうち、リクライニング機能のついた5つの椅子は、化学療法を受けるがんの患者さんでほぼ終日空くことはない。

乳がん患者のBさんは雑誌を読みながら点滴を受けている。隣の椅子とはカーテンで仕切られており、人の目にさらされることはない。点滴はおよそ2時間。ときどき担当の看護師が様子を見に来て声をかけてくれる。 抗がん剤治療を受ける人は1日平均20人。

治療が終わるのは昼過ぎ。しばらく待合室の椅子で休憩して帰途に着く。これがBさんのいつものパターンである。これを月に2回、6カ月繰り返す。

「治療の日以外は自宅で普段通りの生活ができるのが何より。気分的にも楽ですね」

外来化学療法を受けるBさんの感想である。

腫瘍内科医の相羽さんは言う。

「患者さんにとってQOL(生活の質)の維持こそが外来化学療法の最大のメリットです」

急ごしらえの施設には気をつけよう

すでにお馴染みとなったこのような外来化学療法室が、今全国の医療施設で急速に増えている。その理由を相羽さんはこう指摘する。

「新しい有効な抗がん剤が次々と承認され揃ってきたこと、吐き気などの副作用を抑える療法が進歩してきたこと、化学療法の経験を積んだ医師および看護師が次第に増えてきて、入院による患者管理の意義が薄れてきたこと、患者さんのニーズも多いことがその理由ですね」

膨らむニーズに応えるため、一般外来の一角や空きスペースに窮余の策で外来化学療法コーナーを作る施設も多い。そのため、患者さんが長時間の治療を楽に受けられないとか、抗がん剤治療に精通したスタッフを揃えられない施設もある。スタッフ教育に力を入れ、開設後も患者さんの声を聞きつつ、日々改善の工夫をしているような施設はまだ少ないのが現状である。

副作用対策などでは施設間格差も

相羽さんはこう語る。

「抗がん剤が良くなっているとはいえ、副作用がなくなったわけでありません。自宅で過ごしているときはその管理を患者さんに委ねなければならないわけですから、患者さんには副作用対策や体調管理のポイントをよく理解して治療に参加していただくことが大事です。たとえば38度以上の発熱がある場合はとくに気をつけなければなりませんし、病院への緊急電話のかけ方も前もって知っておく必要があります。そういうアドバイスは患者支援として医療施設側が行うのですが、支援方法は施設によってまちまちで、不十分な場合があるのは否めません」

医療施設側の患者支援がおろそかで、患者さんもおまかせ医療になっているような場合は、重篤な副作用の徴候を見逃しかねない。場合によっては、緊急入院が必要になる恐れもある。体調管理や副作用管理がうまくいかないと、せっかくの化学療法の効果自体にも影響を及ぼしかねない。

「化学療法の効果は、決められた薬の量や投与期間を守ってはじめて期待できるのです。ですから治療を継続できないことは患者さんにとって大きなデメリットとなります。治癒や延命、症状緩和といった治療目的が損なわれかねません」

患者さんの自己管理の重要性を相羽さんはこう指摘するのだ。

治療目的を知ることで参加意識が変わる

[化学療法を考える上で大切なこと]

  • 患者さんにとって最善の治療であるか
  • 患者さんが治療を理解しているか
  • その治療が確実に行われているか
  • 効果は現れているか
  • 副作用は現れているか
  • 精神的なケアはできているか
  • 急変時の対応はできているか

そうであるなら、患者としてはどういう点に注意すれば、安全で効果的な外来化学療法を受けることができるのだろうか。

外来化学療法には、実施当日までにいくつかのステップがある。その順を追って患者としての注意点を見ていくことにしよう。

まず外来化学療法を受けることが決まったら、治療全体の流れや、その中での折々の留意点について医師や看護師から説明がある。

そのときのポイントについて東京・世田谷にある三宿病院長の清水哲さんはこう言う。

「このとき重要なのは、主治医とともに治療目的をはっきりさせることです。治療の目的が何なのか。治癒なのか延命なのか症状の緩和なのか。それを理解している場合と理解していない場合では、治療への関わり方が自ずと違ってきます。たとえば治癒を目的としているのであれば副作用が出ても治りたい一心から我慢できるということもあります」

全体の治療の中での外来化学療法の位置づけも確認すべき事項だ。使用する抗がん剤の種類、それが標準治療であるかどうかの確認も重要である。同様に治療期間、治療の効果、終了後に予想される経過(予後)も忘れてならない確認項目だ。

「治療目標や治療期間、治療によって得られる便益がわかっていると患者さんには励みになりますから」と清水さんはその効用を言う。


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