• rate
  • rate
  • rate

がんにより心血管系の問題が生じやすくなる

心疾患をしっかりケアしてがん治療 手術や化学療法を乗り越えるカギとなる

監修●志賀太郎 がん研究会有明病院総合診療部循環器内科医長
取材・文●「がんサポート」編集部
(2015年12月)

  
「術後の循環器のケアももちろん大切」と話す志賀太郎さん

心臓や血管など循環器に疾患を併発する患者は多い。がんになる前からの病気が顕在化したり、がん治療の副作用で起こってしまったりとその形態は様々だ。循環器診療とがん診療との連携を強めようという動きも出てきている。循環器疾患を併発する症例への対応について専門家に伺った。

何年もかけて循環器疾患が現れることも

「循環器疾患があるとがんになりやすいという矢印は成り立ちにくいですが、がんがあると循環器の病気になりやすいという矢印は成り立ちます」

心臓や血管などの循環器疾患を専門とし、各種がんの診療科と協力して治療前から治療後までのケアをしている、がん研究会有明病院総合診療部循環器内科医長の志賀太郎さんはずばりと言った。

「がんになると血管の問題が生じたり、心臓が弱まったりします。抗がん薬による副作用も大きな要因です。担がんである体内環境が心臓や血管の病気を育みやすくするだろうと考えています。抗がん薬の副作用では急速に進行するものもあるし、何年もかけて循環器疾患が出てくることもあります」

がんに見られる3大循環器疾患

がん治療の現場でよく見られる循環器の疾患にはどのようなものがあるだろうか。

「メジャーな疾患は3つあります」(志賀さん)

◆虚血性心疾患

酸素不足になった心臓の疾患の総称。心臓に栄養に与える冠動脈が何かの理由で血液を流しにくくなったり、詰まったりすることで起こる。動脈硬化や血栓が原因となり冠動脈の狭窄や閉塞を来たし、心臓の筋肉が障害される。この病態を狭心症、心筋梗塞、総称して虚血性心疾患という。

がんになると血栓ができやすくなることが知られ、血管壁の弱いところにがんができると、血栓の関与で冠動脈の閉塞や狭窄を引き起こして虚血性心疾患になるという流れもあるし、がん自体や抗がん薬の影響で冠動脈自体に影響が出る可能性もある。

◆心筋障害

抗がん薬のために心臓の働きが弱くなり、心臓のトラブルにつながることがある。心臓のポンプの力強さが失われ、心不全となってしまう。

心不全は心臓のポンプ不全により息切れ、胸水、むくみ、不整脈などが現れ、循環器の治療が必要となることがある。利尿薬などの治療により一時的な問題で回復するケースもあるが、心筋が長期的に機能を失うこともあり、なるべく心臓ダメージの進行の歯止めとなる薬剤や心臓を保護しやすい薬剤を処方することもある。

◆血栓

がんにかかると、がん細胞の組織因子の産生亢進などで血液が固まりやすい体質になっている。がんそのものによることもあるし、抗がん薬の副作用の場合もあると言われている。血栓ができやすくなるのが、エコノミー症候群でもよく現れる足のふくらはぎや太ももにかけての静脈。血栓が育ってゼリー状になり、血流に乗って流れて行くと心臓を通過して肺に詰まってしまう(肺塞栓症)。

血栓が肺で詰まると、酸素を交換する肺の機能が低下するとともに、重症な症例では血圧が大きく低下し、呼吸不全や循環不全、そして死にかかわる重大な事態になることもある。血栓を溶かす治療をがん診療科の主治医と協力のもとで進める。

このほかにも高血圧や肺腫瘍源性塞栓性微小血管症(PTTM)などもある。PTTMは肺動脈の微小腫瘍塞栓などから生じる病態で、肺高血圧症を来して呼吸器不全から短期間で死に至ることもある。各種の学会報告では悪性腫瘍の0.9~3.3%にみられるとされているが、現状では画期的な治療法は確立していない。

PTTM = pulmonary tumor thrombotic microangiopaty

がん治療前の検査で 循環器症状に気付くことも

実際にどのような過程を経て、循環器症状の併発を治療するのかを志賀さんのがん研有明病院を例に見ていく。

「各がん診療科で手術や化学療法などの方針を決めるときに、どのような治療選択を取るにせよ、心臓が元気でないと難しくなります。抗がん薬による心筋症もあります。手術では体力的な負担を乗り越えなければなりません」

まず、治療の前に検査をする。採血、安静心電図、負荷心電図、胸部X線、心エコーなどが行われる。

安静心電図は数10秒間測定し、不整脈や波形の乱れがあると疾患の危険があり得るとみなされる。負荷心電図は運動を数分間した直後に心電図を測定する。負担がかかった後の心臓に変化が起きないかをチェックし、狭心症の検出に有用となるとともに、手術を乗り越える大事な評価項目となる。

「波形の乱れを見るだけではなくて、患者さんの話を聞いて、日常生活で心臓に不安を感じたことはないか、心臓病のリスクとなる糖尿病や高血圧、コレステロールの問題はあるか、喫煙はしているかなどといったことも話してもらい、心電図の評価要素とします。

さらに詳しい精密検査が必要となると、心臓カテーテル検査を予定するケースもある。循環器内科が行い、血管造影室がなければできない検査だが、がん専門病院では心臓がん(心臓腫瘍)が少ないという理由からか、そのような施設を備えているところはあまりなく、同院では循環器内科が充実する連携病院に精密検査を依頼している。

「検査をして初めて自分に循環器系の症状がある人も少なくありません。がんに重ねてのショックとなるとともに、手術まで日数がなかったりすると、さらなる検査でがんの治療日が遅れることに焦りを感じてしまう方も多くいます。患者さんの気持ちも配慮して、こちらも融通を利かせた日程を組みますが、もし治療開始後に心臓トラブルが発生するリスク(危険性)が分かれば、例え治療が遅れたとしても、心臓の状態をしっかり整えてから安全にがん治療に入ってもらいます。

心臓の問題が判明しても、どうしてもがん治療を優先せざるを得ないケースもあります。その場合も、事前にしっかりと循環器の評価をしておくことで、がん治療中に循環器的問題にどう配慮しておくべきか予め準備でき、より安全ながん治療につなげることができます」

関連記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート3月 掲載記事更新!