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前がん病変の白板症に注意を! 自分で気づくことができる舌がんは早期発見を

監修●朝蔭孝宏 東京医科歯科大学頭頸部外科学講座教授
取材・文●伊波達也
発行:2019年10月
更新:2019年10月

  

「繰り返し口内炎になるのはがんをすぐ疑う必要はありません、もしがんならよくなりませんから」と語る朝蔭孝宏さん

2019年2月、歌手でタレントの堀ちえみさんが手術を受けたことで、一躍注目度が高まった舌がん。舌がんは頭頸部に発生した口腔がんで、進行するとQOL(生活の質)が大きく損なわれるが、早期で見つけて治療を行えば、根治は可能であり、5年生存率も9割を超える。

自分で見つけやすいが、口腔粘膜障害(口内炎)と見過ごしがちでもある舌がん。前がん病変である白板症や、舌がんの治療と今後の展望、早期発見のために患者が留意すべき点などについて、東京医科歯科大学医学部頭頸部外科学講座教授の朝蔭孝宏さんに伺った。

自分で見つけやすい舌がん

口腔内にできるがんのうち一番多いのが舌がんで、舌の両側の辺縁部にできることが多い。原因ははっきりはわかっていないが、現在のところ、喫煙、飲酒、虫歯や乱杭歯(らんぐいば)や合わない義歯などが、常に舌に当たって刺激が続いていることなどが原因だと言われている。

したがって、禁煙、節酒、歯の治療を受けるなど、これらの原因を取り除くことが、まず予防になると考えられてはいるものの、それ以外でも舌がんの発症はあり、根本的な予防法は現時点ではわかっていない。そのため、舌がんを根治(こんち)へと導くためには、早期発見に努め、治療を早く行うことが重要となる。

「舌は、体の中にある臓器とは違い、鏡に写して、自分の目で見ることができます。通常、舌はピンク色の粘膜に覆われています。白板症(はくばんしょう)という白い板状や斑状の病変が見つかったり、口内炎がなかなか治らない、ピリピリした痛みがあるなど何らかの不具合を感じたら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう」

そう話すのは、東京医科歯科大学医学部頭頸部外科講座教授の朝蔭孝宏さんだ。

口内炎や白板症といった口腔内の病変が気になったとき、何科を受診すべきか迷う人も多いはずだ。その場合は、まず近隣の耳鼻咽喉科を受診することを朝蔭さんは勧める。

「例えば、口内炎になって受診すれば、軟膏などの薬をもらいますが、口内炎なら普通3〜4日でよくなります。ところが、2週間以上薬を使ってもよくならないようでしたら、気をつけなければいけません。

一般の方にはわかりにくいと思うのですが、口腔内の疾病は、歯や歯茎(はぐき)以外は基本的には耳鼻咽喉科の領域なのです。私たちが担当する頭頸部外科は、その中のがん治療に特化した科なのです。ですから、がんにつながることが疑われるような診断の場合は、耳鼻咽喉科に委ねるのがスムーズだと思います」

舌がんは「口腔がん」という言い方をすることもあるため、最初に歯科や口腔外科を受診するケースも多いようだが、がんは全身疾患と考えるべき病気なので、耳鼻咽喉科⇒頭頸部外科という流れで受診するということを覚えておくとよいかもしれない。

白板症は前がん病変、定期検査を

■画像1 白板症の症例写真

「白板症は、前がん病変ですが、がんとは区別します。歯磨きのとき自分で気がついたり、歯の治療のとき歯医者さんに指摘されたりして、受診される方が多いです」と朝蔭さん。

白板症は、口腔内の粘膜が白く変化する病変。舌がんと同じような部位、舌の左右の縁(ふち)にできることが多いが、その他にも口腔内の色々なところに多発することがある。表面はツルっとしていることが多いが、ザラザラしている場合もある(画像1)。

「白板症が見つかったら、病変の一部を生検する必要があります。病理組織学的には上皮の異形成が認められます。検査で異形上皮がクロに近ければ、がんと同じように切除生検を行います。生検して異形上皮が軽度なら2〜3カ月に1度経過観察をして、2~3年変化がなければ、半年に1回の定期検査で済むようになります」

白板症のがん化率は、日本では3.1〜16.3%ほどだ。

早期舌がんは手術と密封小線源療法

■画像2 舌がんの早期症例写真

検査の結果、早期がん(I、II期)だった場合には、治療の第1選択は手術だ(画像2)。

「手術は、がん病変の部分を切除する『舌部分切除術』を行います。小さく取れば、舌の機能が温存されるため、QOLが低下することはありません。

ただし、早期でも術後半年〜1年という比較的早い時期に、頸部リンパ節へ転移する可能性が3割程度あります。ですから、術前の検査で転移の可能性がある症例については、予防的に頸部リンパ節の郭清(かくせい)を行う場合もあります」

頸部リンパ節を郭清すると、唇の動きが悪くなったり、腕を上げにくくなるという合併症が生じることがある。そのため、現在、頸部リンパ節を予防的に郭清する必要があるかどうかを検証するため、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)による多施設前向き研究が行われている。「JCOG1601 StageI/II舌癌に対する予防的頸部郭清省略の意義を検証するランダム(無作為)化比較第III相試験」という試験だ。

朝蔭さんもこの試験に中心メンバーとして関わっている。

「登録と解析が終了する、約10年後には結果がわかると思います。この結果いかんでは、再発する可能性のない約7割の人への予防的郭清をすることが必要なくなる可能性があります」

早期がんの治療では、もう1つの選択肢がある。密封小線源療法だ。

これは放射線治療の1種で、舌がんでは放射線を外から照射する方法は有効ではないので、イリジウムなどの放射性金属を小さな針にして、舌に埋め込む。いわゆる組織内照射といわれる治療法だ。

現在では、朝蔭さんたちの東京医科歯科大学ほか、ごく限られた施設のみで実施されている(実施施設:東北大学医学部附属病院、東京医科歯科大学医学部・歯学部附属病院、国立がん研究センター中央病院、京都府立医大附属病院、大阪大学医学部・歯学部附属病院、岡山大学医学部附属病院、広島大学医学部附属病院、九州大学医学部附属病院)。

「手術をどうしても受けたくない患者さんや、心臓が悪いなど、合併症のある患者さんには小線源治療が選択されます。ただし、元気な若い人であれば、手術のほうが向いていると考えています。

機能温存の程度は、小線源療法と手術でさほど変わりはありません。手術は被爆しないで済みますし、痛みも2週間程度で消えます。放射線治療は『切らない』ので、低侵襲(ていしんしゅう)というイメージが強いですが、放射線熱傷(やけど)は1~2カ月続きますし、少ないですが、周囲の顎(あご)などに放射線の影響が出ることもあります。浅いけれども広くひろがっているような病変に対して、小線源療法は適しています。手術で広く取ると機能に影響が及ぶ可能性があるためです。

いずれにしても、どちらの治療を選択するかは、そのメリット・デメリットをよく理解していただき、主治医とよく相談して決めてください」

舌がんの早期がんでは、通常、他のがんで行うような術後補助化学療法は、その有用性のエビデンス(科学的根拠)が明確にないため行っていない。術後補助化学放射線療法も過剰治療とみなされており、行わない。また、術前化学療法に関しても、予後に差が出ないというデータがあり行われていない。

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