院外からも患者さんを受け入れ、国内普及を目指す

日本初!国立がん研究センター中央病院にがんに特化した「IVRセンター」開設

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取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2015年2月
更新:2015年5月

  

記者会見の様子。右から理事長の堀田知光氏、IVRセンター長の荒井保明氏、放射線診断料の曽根美雪氏、緩和医療科の里見絵理子氏

国立がん研究センターは昨年(2014年)12月5日、中央病院に日本初のがんに特化した「IVRセンター」を開設した。それに伴い記者会見が開かれ、堀田知光理事長は、今後は他の施設からの患者さんも受け入れるとともに、医療機関にIVRを知ってもらい、認知度の低いIVRの普及を図りたいと説明。IVRのセンター化を通じて、「がんセンターとしてのミッションを進めていきたい」と意気込みを語った。

IVRにはがん治療と緩和治療の2つがある

IVRとは、インターベンショナル・ラジオロジーの略。画像診断装置で体の中を透かし見ながら、体内に挿入した器具で行う治療のことをいう。

開設された「IVRセンター」のセンター長で、国立がん研究センター中央病院病院長である荒井保明さんはIVRについてこう説明する。

「体を大きく切り開くことなく、ほとんどが局所麻酔による小さな傷で行われるため、患者さんの負担も小さく体に優しい治療法です。また侵襲性も低いので、手術と比べて回復にも時間がかかりません」

IVRには大きく分けて、❶がん自体を治療する局所治療 ❷苦痛を緩和する治療の2つがある。がん自体の治療については、肝がんに対する動脈化学塞栓術(TACE)やラジオ波焼灼(熱凝固)療法(RFA)、腎がんに対する凍結療法などが代表的だ。

一方、緩和治療としては、溜まった腹水を心臓近くの血管に戻すシャント術、骨転移による痛みに対する骨形成術(骨セメント)、がんで潰れた血管に対するステント治療などがある。

体に優しく治療効果も早く現れるIVR

IVRの中でもとくに強調したいのが、症状緩和への効果だと荒井さんは強調する。

「実はがん自体にはあまり痛みは伴いません。がんによって、どこかが閉塞(梗塞)したり、何かが貯留してしまうことで、痛みなどを伴い状態が悪化していきます。そこでIVRで原因となっている閉塞部位を取り除いたり、貯留しているものを抜去することによって、症状は良くなるのです」

エビデンス(科学的根拠)も出ている。痛みを伴う骨転移の患者さん33例に骨形成術を行ったところ、臨床的有効率70%、治療効果出現期間(中央値)は1日という結果だったのだ。

「骨形成術で効果が認められた方は約7割。しかも、ほとんどの患者さんが治療翌日には痛みが和らいでいることになります」

現在、この骨形成術は保険適用にもなっており、医療費の面からもIVRによる骨形成術は、医療用麻薬などによる薬物治療よりも安くすむという。

「IVRは、低侵襲で効果もすぐに現れ、また廉価でもあり、超高齢社会のがん医療に貢献できる可能性があります」と荒井さん。

こうしたIVRによるがん治療は、国立がん研究センター中央病院では年々増加傾向にあり、年間実施数は4,000件以上に及んでいる。しかし国内を見渡すと、その認知度は低く、十分に活用されていないのが現状だ。

院外の患者さんも受け入れエビデンス構築に注力

IVRセンターに2台装備されているAngio-CT装置

そこで、国立がん研究センターでは中央病院に「IVRセンター」を開設。これまで原則として院内の患者さんを対象に行ってきたIVRを、他の施設の患者さんにも提供できるよう、受け入れ体制や設備を整備。同時に医療機関にもIVRの認知度を高めたいと話す。また、臨床試験を通してIVRのエビデンスを構築し、IVRを活用したより良いがん医療の普及も図っていくという。

「今後は、院外からの患者さんも受け入れて治療を行っていきます。患者さんに良い治療を受けていただくだけでなく、当院に依頼していただいた各病院の先生方にもIVRを知っていただき、他の施設でもIVRを活用していただくよう、外部に向けて門戸を開きました。患者さんはもちろん、医療者、国民の皆さんにも新しい良い治療であるIVRを知っていただきたいと思います」

IVRセンターで治療を受けたい場合、基本的に医療機関からの紹介が原則となる。その際の窓口として、IVRセンターでは医療機関からの電話相談にも対応しており、相談があれば迅速に対応していくとしている。

IVRセンターで治療を受けたい場合、基本的に医療機関からの紹介が原則となる。詳細は国立がん研究センター中央病院ホームページにも記載されている

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