“暗黒大陸”小腸内部に潜り込んでがんを見つけ出すカプセル内視鏡

監修:松橋信行 NTT東日本関東病院 消化器内科・内視鏡部部長
取材・文:黒田達明
発行:2010年2月
更新:2013年4月

  
松橋信行さん
NTT東日本関東病院
消化器内科・内視鏡部部長の
松橋信行さん

胃からも、大腸からも到達しにくい小腸。その内部を、痛みを伴わずして知る術がある。カプセル内視鏡だ。その使用によって多くの患者さんの病変を見つけることができるようになった。真っ暗な小腸を照らし出す、画期的な検査だ。

写真:カプセル内視鏡

オレンジ色のものはカプセル内視鏡のキャップ。データレコーダなどの取り付けが終わったあと、カプセル内視鏡を飲み込む

写真:カプセル内視鏡

カプセル内視鏡は直径11ミリ、長さ26ミリ。ほんの指先ほどの大きさだ

その患者さんはNTT東日本関東病院内視鏡センターの検査室に普段着のまま入ってきた。

検査着に着替えて胃カメラや大腸内視鏡検査の受診を待つ他の患者さんたちに比べて、とても気楽な様子だ。

「昨夜の夕食以降は絶食していただけましたか?」と医師が声を掛けながら、装置の装着を始める。

患者さんの腹部から太股の付け根にかけて、カマボコ大のシール8枚が貼られる。各シールから細いケーブルが伸びて、それらの先は1つの文庫本サイズの箱に集まる。腰にバンドを巻いて、箱をバンドに固定する。箱の重さは500グラム程度。バンドがずり落ちないようにサスペンダーで肩から吊るす。

これで準備完了だ。「装着したまま、普段通り生活できます。上着を着れば外からはわかりませんよ」と医師。

次に、カプセル錠にしてはやや大振りのものが患者さんに手渡される。ベージュ色のカプセルの片側がチカチカと点滅している。「噛まずに飲み込んでください」と医師が水を渡す。

カプセルは直径11ミリ、長さ26ミリ。カプセル内視鏡を体内に入れるのはいとも簡単だ。飲み込むのに苦労する患者さんはほとんどいないという。

小腸を直接観察する画期的な検査手段

最初に書いておくべきだろう。カプセル内視鏡は従来の胃カメラ(上部消化管内視鏡)や大腸内視鏡(下部消化管内視鏡)検査から私たちを解放してくれるものではない。同院内視鏡部部長の松橋信行さんは言う。

「小腸検査にのみ承認されています。欧米では食道や大腸の検査も行われていますが、日本ではまだできません。胃はカプセルで見るには広すぎて、現在の技術では難しいでしょう」

そう聞いて、がっかりする読者もおられることだろう。しかし、この検査法の登場はまぎれもない朗報なのだ。

長さが7メートルもある小腸はこれまで良い検査方法がなかった。口から入れる上部消化管内視鏡は胃の先せいぜい50センチ、肛門から入れる下部消化管内視鏡も大腸の先せいぜい50センチほどしか届かず、その間にある小腸は直接観察のできない“暗黒大陸”とも呼ばれていたのだ。

「かつては小腸疾患が疑われる患者さんはバリウムを飲んでレントゲン検査を受けていたのですが、小腸は折り重なっているため、所見のはっきりするケースは1~2割でした。ですから、大きくなった腫瘍が小腸を詰まらせてから小腸がんが見つかることが多かったのです」

「これに対してカプセル内視鏡は画期的で、出血で検査となった方のうち6割の方に原因となる病変が発見されています。小腸がんが発見される確率は100人につき1~2人程度です。残念ながら、出血が認められてからしか検査できないため、がんはやや進行してしまっていることが多いですが」

1秒間に2枚ずつ撮影しながら無線で送信する

ここで検査技術の概要をみておこう。患者さんの飲んだカプセルがカメラだ。カメラは1秒間に2枚ずつ写真を撮りながら、撮影画像を無線で送信する。カプセルは消化管の運動によって、自然に運ばれていき、最後は便と一緒に排泄される。通過時も排泄時も痛みは伴わない。

患者さんの腹部に貼られたシールは、カプセルから送信される画像を受信するアンテナだ。アンテナが8つあることで、カプセルが体内のどこから送信したかを知ることができる。これにより、各画像が小腸のどこを撮影したものかがわかるのだが、小腸の位置は動くため、あくまで目安だ。

腰に付けた箱はデータレコーダで、受信した画像はここに蓄えられる。全撮影が終わったら、医師がデータレコーダから画像を専用のコンピュータに取り込んで、画像診断を行う。

写真:コンピュータで画像診断
写真:撮影画像

小腸内部を8時間撮影。カプセルが撮影した小腸内部の画像を専用ソフトで映しだして画像診断が行われる

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