自己検診は乳がん早期発見の近道

監修:遠藤登喜子 国立名古屋病院放射線科医長
発行:2004年4月
更新:2013年4月

  
遠藤登喜子さん

えんどう ときこ
国立名古屋病院放射線科第一医長、名古屋大学医学部臨床教授、マンモグラフィ検診精度管理中央委員会教員・研修委員会委員長。

早期発見、早期治療が乳がんのキーワード

近年、食生活の変化や女性の生活パターンの変化などから、乳がんにかかる人が増えています。とくに乳がんは若い年齢で発症するのが特徴で、30歳代から増え始め、40歳以上になると急カーブで増加しています。30歳代から50歳代の若い年齢層で、がんで亡くなられる方のトップは乳がんです。ですから乳がんで亡くなる方を少なくするためには、もっと社会的な対応をしていかなければいけないと思います。

では、どうしたら乳がんを減らすことができるでしょう。現在では、乳がんにならないための予防法は明らかではありません。それならば第二次予防法として、致死的にならないうちに発見し、治療をするのが最善の方法といえます。

日本では従来から、視触診による乳がん検診が行われてきました。しかし、視触診のみによる検診は必ずしも有効ではないということから、欧米諸国で有効と評価されているマンモグラフィによる検診が導入されるようになりました。定期的なマンモグラフィ検診と視触診を受けること、それに加え、自己検診をすることが、乳がんを早期発見する近道ではないかと思います。

よい写真、確かな読影のために

平成9年、日本乳癌検診学会が中心となり、関連6学会の協力のもと、マンモグラフィ検診精度管理中央委員会(以下、精中委)が設置され、マンモグラフィの精度管理体制づくりが行われてきました。

マンモグラフィは機械としての精度はもちろん、撮影技術と映像技術、医師の診断能力が必要とされます。患者にとって役立つ検診にするために、精中委の教育・研修委員会では、医師と放射線技師の養成のための講習会を定期的に行っています。講習会終了後に試験を行い、AからDの4段階評価をし、AもしくはBの方に、検診マンモグラフィの取り扱いをすることを認めています。

現在まで医師と技師合わせて7000名以上が受講し、精中医のホームページでは、認定を受けた医師および技師のリストを公表しています。また試験合格者がその地域で講師となり、次の人材を育てていく仕組みになっています。

自己検診を習慣づけてほしい

視触診ではわかりにくいがんでも、マンモグラフィで見ると、石灰化したがんの様子がよくわかります。では検診でマンモグラフィがあれば視触診は必要ないかというと、それは違います。

乳がんにはいろいろなタイプがあります。乳腺にがんがうずまっている場合は、マンモグラフィで写真を撮っても、乳腺とがんが同じくらいの濃度で写り、はっきりとわかりません。でも触診してみると、少し固いしこりがあるのを感じることができます。ですから乳がんを発見するためには、どちらも欠かせないのです。

画像診断による検診は、医療機関でなければ受けることができませんが、自分で乳房をチェックすることはいつでもできるはずです。自己検診をしていれば、次の検診を待つことなく、乳房の異常を発見することができます。ぜひ女性の方は、乳がんの自己検診を習慣づけていただきたいものです。

乳がん検診を受けて異常がなければ、その日は「現在発見される乳がんはない」と保証された日です。ですからその日のうちに自分の乳房をよく触っておきましょう。乳腺の状態は人によってまったく違います。柔らかい、固い、ゴツゴツしている、なめらかなどさまざまです。まず自分の乳房をよく知り、ときどき自己検診をして、「いつもと乳房が違うな」と思ったら、迷わず専門医に相談してください。

乳がんの温存手術をされた方は、局所再発や新たにがんができる場合、がんが転移してきた場合などの心配があります。手術後も怖がらずによく見て、触って自己検診をしてください。温存手術をすると、傷の線維化や、放射線治療の影響で組織が硬くなることがあります。乳房が手術前とは違った状態であることを把握しておきましょう。

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