ASCO-GI2013の成果を中心に SOX療法の有効証明で、広がる進行・再発胃がん治療の選択
「進行・再発胃がん治療の選択肢は広がっていきます」と話す
山口研成さん
進行・再発胃がんに対するファーストラインの化学療法は、現在はTS-1*+シスプラチン*(SP療法*)が標準治療だが、TS-1+オキサリプラチン併用のSOX療法も同等の有効性があることがわかり、新たな治療法として加わる見通しとなった。今後、進行胃がんの治療は、複数の治療法の中から患者さんが選択する時代に変わっていくことが期待されている。
SP療法 vs. SOX療法
進行・再発胃がんのファーストラインの治療法として、TS-1とオキサリプラチン併用のSOX療法が有効との報告があったのは、2013年1月に開催された、米国臨床腫瘍学会の消化器がんシンポジウム(ASCO-GI2013)。北里大学東病院の樋口勝彦さんが第Ⅲ相試験の結果として発表した(図1)。
この試験結果について、埼玉県立がんセンターの消化器内科科長兼部長の山口研成さんは次のように語る。
「オキサリプラチンは、日本を含め世界中で大腸がんの標準治療として用いられています。しかし日本では、進行胃がんに対する治療薬としては未承認の薬です。今回の試験の結果、現在の標準治療であるSP療法と、オキサリプラチンを使ったSOX療法とでは、無増悪生存期間*(PFS)はどちらもほぼ同じであることが証明されました。つまり同等の効果があるというわけで、そうであるなら、シスプラチン*を使った治療の場合は副作用対策のため入院が必要なのに対して、オキサリプラチンは外来で治療ができてより簡便に使えるので、患者さんにとってのメリットは大きいと考えられ、早期承認が望まれています」(図2)
この試験は、手術不能進行または再発胃がん患者さんを対象に、SOX群とSP群に無作為に割り付けて実施。
2011年1月から10月までに日本人の患者さん685人(SOX群343人、SP群34 2人)が登録。SOX群は3週間を1サイクルとしてTS-1 40mg/m3を1日2回14日間投与し、オキサリプラチンは治療1日目に100mg/m3を投与。
SP群では5週間を1サイクルとしてTS-1 40mg/m3を1日2回21日間投与し、シスプラチンは8日目に60mg/m3を投与した。
結果は、PFS中央値はSOX群が5.5カ月に対しSP群は5.4カ月でほぼ同等の成績だった。奏効率*(RR)はSOX群が55.7%、SP群が52.2%だった(図3)。
*TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム *オキサリプラチン=商品名エルプラット *SP療法=TS-1+シスプラチン *無増悪生存期間(PFS)=治療後、がんが進行せず安定した状態の期間 *シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ *奏効率=がんの大きさに50%以上の縮小がみられた割合
欧・韓ではすでに標準治療
かつて胃がんは、抗がん薬が効きにくいがんの1つといわれた。とくに、進行・再発がんに有効な薬はないとまでいわれたが、TS-1など新薬の登場で、がんの進行を遅らせたり、縮小・消失させることも可能になってきた。
「臨床試験をベースにして、標準治療として日本のガイドラインに明記されるようになったのがSP療法です。その点でこの治療法の登場は非常に大きな意義があり、さらに新しい選択肢として出てきたのがSOX療法です」(図4)
なぜオキサリプラチンなのかというと、1つには、同じ消化器のがんである進行・再発大腸がんの治療薬としてすでに承認され、効果が出ていることがあげられる。
また、イギリスとドイツで、オキサリプラチンとシスプラチンの比較試験が行われ、今回と同様の結果が出ており、進行・再発胃がんに対する治療では、すでにシスプラチンはオキサリプラチンに置き換わっている。
さらに、韓国でも、進行・再発胃がんに対してオキサリプラチンを使った治療法が標準治療となっているという。
米国でもオキサリプラチンが使われるようになっている。ただし、アメリカでは大腸がんの治療法であるFOLFOX療法*が進行・再発胃がんでも使われていて、この療法は5-FU*とロイコボリン*、それにオキサリプラチンの3剤を併用する治療法。SOX療法で用いるTS-1は5-FUの効果を高めた薬であり、FOLFOX療法とSOX療法はほぼ同じ治療法といえる。
つまり、世界の進行・再発胃がん治療の流れは、シスプラチンからオキサリプラチンへと変わりつつあるのだ。
*FOLFOX療法=5-FU(商品名)+ロイコボリン(商品名)+エルプラット(商品名) *5-FU=一般名フルオロウラシル *ロイコボリン=一般名レボホリナート
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