術後抗がん薬治療の開始時期について
海外で右胸温存手術をしました。Ⅰ期と病期(ステージ)が低かったため、担当医からは再発・転移リスクは低いと言われました。現在、オンコタイプDXの検査結果待ちで、放射線治療とホルモン療法(タモキシフェン*服用)をしています。この検査結果で、もし再発・転移の可能性が高いと出た場合、抗がん薬治療(化学療法)を始めなければなりませんが、そうすると治療の開始時期が術後3~4カ月になってしまい、治療に影響が出ないか心配です。どうしたらよいのでしょうか?
(神奈川県 女性 43歳)
A 術後3カ月くらいまでなら問題ない
オンコタイプDXは、主にホルモン受容体陽性の乳がん患者さんに対して、がん細胞遺伝子の発現状況や活性の度合いから、術後の再発可能性をスコア化する遺伝子検査です。
この検査は、術後の治療方針を決める上で参考にされていますが、その有用性については未だ臨床試験中であり決定的ではありません。現在、国内では保険適用外のため検査費用に40万円程度かかります。
オンコタイプDXの検査結果を待つことで、術後の治療が遅れることをご心配のようですが、これまでに、術後の抗がん薬治療をいつまでに行ったら安全か、という臨床試験などによる正確なデータはありません。
ただ、過去のデータの後ろ向きの分析から、「術後13週以内に抗がん薬治療を開始すれば、成績は落ちなかった」というデンマークからの報告があります。また別のカナダの報告では、「術後12週以上抗がん薬治療開始が遅れると成績が落ちていた」というものもあります。
エビデンス(科学的根拠)レベルは低いですが、ホルモン薬、照射も施行しているならば、術後3カ月くらいの遅れまでは問題ないだろうと考えられます。
意味もなく治療の開始を遅らせることは良くありませんが、質問者のように、その後の治療方針を決める検査結果を待つ場合は、許容範囲内だと考えます。
ちなみに、乳房温存術後の放射線治療は、米国のNCCN*ガイドラインによると、抗がん薬治療終了後に開始することが勧められています。
ただ、先に放射線治療を開始しても、成績が悪くなるという決定的なデータはなく、切除断端が近い場合などは照射を先行させても問題ないと考えられています。
*タモキシフェン=商品名ノルバデックス *NCCN=全米総合がん情報ネットワーク