塞栓療法と化学療法 再発時の治療は?

回答者・石井 浩
がん研有明病院消化器内科 ペプチドワクチン療法担当副部長
発行:2014年2月
更新:2014年5月

  

肝がんが再発しました。がんが門脈という静脈に入り込んだ門脈腫瘍栓の状態になっています。医師からは、肝動脈化学塞栓療法かネクサバールによる化学療法を行うと言われています。どちらがいいのでしょうか。

(63歳 女性 宮城県)

肝機能検査後に治療薬の検討を

がん研有明病院消化器内科 ペプチドワクチン療法担当副部長の石井 浩さん

肝細胞がんは、肝臓の門脈という血管を介してがん細胞が散らばっていきます。したがって、進行した肝細胞がんでは、多数のがん細胞が門脈の中に鋳型のように詰まってしまうことがあります。門脈の血流は肝臓を栄養していますので、詰まると肝臓は栄養補給路が断たれ弱ってしまいます。

このような状況下で、肝動脈塞栓療法により動脈も詰めてしまうと、門脈からの栄養、肝動脈からの酸素が断たれ、肝臓は大きなダメージを受けます。広範な門脈腫瘍栓がある場合の肝動脈塞栓療法は大きなリスクがあり、一般的にはお奨めできません。

このような場合に考慮されるのは化学療法であり、局所療法である肝動注化学療法と全身療法であるネクサバール療法があります。どちらを選択するかは議論が分かれるところです。海外ではネクサバール療法が好まれますが、高い技術力を背景として、本邦では肝動注化学療法を推奨する施設も少なくありません。

ネクサバールは分子標的薬で、がんの増殖や進行にかかわる遺伝子やタンパク質の働きを妨げることにより、がんの進行を抑えます。1回2錠を1日2回服用する飲み薬です。よく見られる副作用に皮膚症状、下痢・食欲不振、疲労感、高血圧があります。

肝動注化学療法はカテーテルを用いて肝臓内に抗がん薬を注入します。カテーテル操作や動注ポートという小器具の体内埋め込みに技術が必要です。

ネクサバール=一般名ソラフェニブ

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