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- 山崎多賀子が聞く『快適に暮らすヒント』
がんサバイバーが専門家に聞いてきました!
――美容ジャーナリスト山崎多賀子の「キレイ塾」
がんになっても快適に暮らすヒント Vol.1 改めまして山崎多賀子です
みなさん、こんにちは。美容ジャーナリストの山崎多賀子です。ご存じのとおりこの7月に「がんサポート」誌が雑誌からWeb版へと全面移行しました。それに伴い、2010年5月号から続いた連載「キレイ塾」もWeb版へお引っ越し。新たな気持ちで連載を続投させていただくことになりましたので、引き続きよろしくおねがいします。
そこで今回改めて、自己紹介もしつつ、なぜ、がん治療の情報サイトで「キレイ塾」なのか。これまでを振り返りながら連載の趣旨をお話ししたいと思います。
私はフリーランスの美容ジャーナリストで、乳がんサバイバーです。2005年に乳がんが見つかり、右乳房全摘出、乳房再建、抗がん薬、分子標的薬、ホルモン療法と6年間余り治療を受けました(詳しくは、がんサポート「私の生きる道」2008年5月号を参照)。
外見への視線が気になって 普通に過ごせないことが悲しかった
がんという病は怖いけれど、がん治療が体へ与えるダメージも怖かった。それでも命が最優先と、なんとか気持ちに折り合いをつけて治療を受け入れたのですが、そこへ脱毛という副作用による心のダメージ。
胸を失うことも悲しかったけれど、たとえ期間限定でも首から上が別人のように激変することが、直近の一番の恐怖でした。周りの人は私をどんな風に思うだろう。可哀想とか怖いとか思われるんだろうな……どっちも嫌だなと。
体がつらいときは病人でも、体調のいい日は「普通の人」として普通に生活してやる!と意気込んではみたけれど、家の外では人の視線を気にしながら生活をすることになるのかと思うと、情けないやら悲しいやら。外見が心を萎えさせてしまうのです。
ですから、自然なウィッグやオシャレに見える帽子を手にしたときに、大丈夫だ!と思えました。眉毛やまつ毛が抜け、顔がくすんでも、メイクでリカバリーし「普通の人」に見えたときに、これで本当に大丈夫だと思えました。同時に、自分の中にムクムクと力が湧いてきて、また前を向くことができました。
外見をキレイにできれば 心も強く、清々しくいられる
外見と心がこんなに密接だとは、がんになるまで知りませんでした。もしもずっと入院していたならば、外見のことをそこまで気にしなかったかもしれませんが、治療の多くが通院で行われる乳がん患者にとって、社会に対して外見は大きな問題になってくるということも身をもって知りました。
そして、外見をキレイにしたら、心もキレイになることを実感しました。私は常々、強いこと、清々しいことは美しいことだと思っているので、ここでいう心のキレイとはそういう意味です。みじめで卑屈になっていた心が解放されて、強い心を取り戻すことができたと感じたのです。
がんになってわかったことは、がんやがん治療に対する正しい情報をもつことの大切さと、医療従事者に任せきるのではなく、悩みや苦痛に対し、自分でも対処できる方法を知っていると心が強くなり、自分らしさを取り戻すことができるということでした。もちろん外見だけでなく、ぐっすり眠る方法とか、おいしく食べる方法とか、治療中でも快適に暮らす方法をたくさん知っていたほうがいいのです。
治療中でも元気に見えるメイク法を 患者に伝える活動をしてきて
そのような思いから抗がん薬治療が終わると、自分の得意分野の美容の知識を生かし、メイクによる元気に見えるリカバリー法をがん患者に伝える活動を始めました。そのころは脱毛中のがん患者のための美容情報がほとんどなく、きっとみなさんすごく不安で、脱毛して困っているだろうなと思ったからです。
この活動がきっかけで「がんサポート」誌でも連載させていただくことになりました。外見や美容のこと以外にも、患者や家族が暮らしていく中で、知っておくと役立つ情報を、患者目線で発信しようということで、名前を「キレイ塾」と名付けて連載がスタートしました。
連載が続く間に、がん患者を取り巻く環境は大きく変わったと思います。2013年に国立がん研究センターではアピアンランス(外見)支援センターが開設し、インプラントによる乳房再建が保険適用になり、支持療法や緩和ケアが充実してきました。そこには、患者中心の医療を目指そうと、コツコツと努力を重ねてきた多くの人たちがいました。
外見も含めたQOLのケアを 病院で行えることを目指してきた人たち
それまで、「病院は病気を治す場所。QOL(生活の質)の向上は病院の外の仕事」というような風潮が強かったと思うのですが、医療従事者ががん患者のQOLの向上に積極的に取り組もうという動きがこの数年とても大きくなってきたと感じています。それはとても歓迎すべきことです。
現在、アピアランス支援センターの講習会には毎回定員を超える多くの医療従事者の参加があるなど、外見ケアやQOL向上のためのサポートも医療の一環としてとらえるようになったのも、大きな変化だと思います。
6月16~18日に東京で開かれた第24回日本乳癌学会では、サバイバーと医療従事者による患者セッションが初めて開催され、私はアピアランス支援に関する座長を務めさせていただきました。そこで講演をお願いしたのは、国立がん研究センター中央病院アピアランス支援センター長の野澤桂子さんと、東京女子医科大学看護学部教授の池田真理さん。両者とも、医療従事者が積極的にかかわる外見ケアの重要性を研究し、説いています。
お2人の話はこの連載でも紹介していきますので、お楽しみに!
がんになっても自分らしく キレイに輝いていきましょう
学会翌日の一般向けイベント「Breast Cancer Festival」では、昨年(2015年)に引き続き、乳がん患者をモデルにしたファッションショー「乳がんサバイバーズコレクション」が開催され、今年は運営リーダー(リーダーという名の総合雑用係)を担当しました。
定員の3倍近い応募から抽選で選ばれたモデルさんには、治療中でウィッグの方や再発の方もたくさんいましたが、みなさん「がんだけど、私は私、輝いて自分の人生を歩いていく」。「がんになっても幸せ。その証としてモデルになったキレイな姿をみんなに見てもらいたい」「ショーに出ることでがんになっても輝けるのだということを、みんなに発信したい」と口々におっしゃっていました。乳がん、卵巣がんとダブルキャンサーで、「2回目の脱毛中だから、その記念にヘッドスキンで歩きたい!」と言ってランウェイで帽子を取った方の笑顔は、とびっきり輝いていました。
がんになっても、自分らしく生きる。がんになったから、小さな幸せの大切さに気づけた、という方がたくさんいます。そして患者が自分らしく生きることを応援する人たちがたくさんいることを、取材していきたいと思っています。
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