患者5人による“わたし的”副作用克服記
苦しみを乗り越えた先輩患者たちの副作用に負けない極意
先のことは考えない。淡々と治療をこなす
堀田貴予さん(39歳)
堀田貴予(ほった たかよ)
04年、34歳のとき、子宮頸がん2a期と診断、広範子宮全摘術を受ける。現在は個人でマーケティングやホームページ管理などの仕事を請け負っている。「子宮ガン治療の話」というブログを立ち上げており、主に婦人科がんで悩む患者さんの相談に乗っている
堀田貴予さんが子宮頸がんのステージ(病期)2aと診断され、子宮だけでなく卵巣やリンパ節まで切除する広汎子宮全摘術を受けたのは2004年。34歳だった。
その若さでの大手術は、どんなにショックだったことかと思うが、堀田さんは淡々と語る。
「悲壮感はなかったですね。ただ治療をするだけ、と思っていました。今も不安は感じません。先のことを考えすぎて不安になるのはいいことじゃないと思う。私としては、とにかく個人事業主としてがんばり、再発したらまた治療していくと……」
術後補助療法として、抗がん剤と放射線治療を同時に行う化学放射線治療を受けたので、副作用はあった。ランダ(一般名シスプラチン)と5-FU(一般名フルオロウラシル)を、3週間1クールで3クール。それに、1.8グレイの放射線を25日間、下腹部に照射した。
「1番きついと感じたのは、味覚異常と嗅覚異常。廊下を歩く人が喫煙者かどうか、病室でわかるほどでした。吐き気も強かったけれど、あまり気になりませんでしたね。もとが酒飲みなので、吐き慣れていまして(笑)。水を飲み、胃酸を薄めてから吐かないと、のどが大変なことになると、わかっていましたので。ただ、脱力感の強い中、点滴をぶら下げて何度もトイレに行くのは大変でした。それでも、食べられるものが見つけられたのでよかったです」
それは何ですか?
「いわゆるジャンク・フードです。いつもはおいしいと感じる出汁の効いた味が生臭くて、カップラーメンのほうがおいしかった。ご飯の匂いもダメでしたが、ゆかり(梅干に入った紫蘇漬を粉末にしたもの)を混ぜたおにぎりは大丈夫でしたね。栄養補助食品のウィダー・イン・ゼリーも食べられたけど、食べ過ぎると吐きました。食べる量にも注意が必要みたいです」
ほかには関節痛、頭痛、耳鳴りなども。また、放射線治療の副作用は、治療が始まってすぐではなく、あとから強く出た。
「放射線を照射して20日目を過ぎるころから、食べると腹痛がし、下痢と便秘をくり返しました。また放射線に過敏になり、治療後のCTでは脱力感で動けませんでした。退院後も半年くらい腸の調子が悪く、便秘をしたことがなかったのに、便秘がちになりました」
術後約5年経つ今、ほぼ元通り。ただし、開腹手術の後遺症として腸閉塞には引き続き注意が必要だ。
気になるのは、手術の後遺症であるリンパ浮腫。術後2年目から出るようになった。対策は弾性ストッキングを履くこと、バス旅行のように長くすわる旅行をしないこと。とにかく無理をしないこと……。
子宮がんの若い患者さんが情報をもちより、励ましあう
「私のがんの話や、同じ時期に病棟で暮らした患者さんの話の中で、何かヒントになっていただければと思います」と堀田さん
仕事も同様だ。「個人事業主としてがんばる」という言葉があったように、堀田さんは病気以前からホームページ管理や、テレフォンアポイントメントやテレフォンマーケティング、営業ツールの制作などの営業サポートなどを請け負ってきた。
「出勤の必要がなく、自由も利く。会社勤務の人より楽だと思います。基本的に徹夜するような仕事の仕方はきらいなので、朝早く起きて、チャチャと片づけてしまいますし」
ブログもお得意ですね。
「最初は猫のブログでしたが、子宮がん体験をアップするうち、書き込みが増えたので、『子宮ガン治療の話』というブログを別立てしました。メールにも返信するし、直接話をしたいという人とは電話で話します。バーチャル患者会という感じ。私自身の体験はもう情報として古いけど、日常の体調管理やメンタル面なら多少は役に立つかなと」
子宮頸がんの患者さんには、若い女性が少なくない。堀田さんはそうした患者さんと数多くリンクしているが、そのやりとりを読むと、20代~40代でがんを発症した患者さんが希望を持って病と闘い、人生を豊かに過ごそうと試行錯誤する姿が浮かび上がってくる。
そんな中で、堀田さんは「頼りになるおねえさん」という印象。ブログにも子どもをもつことについてなど、体験者ならではの深い思いやりに満ちたアドバイスが掲載されている。加えて、副作用を乗り越える具体的なアイデアも。たとえば、「脱け毛対策」という項目を読むと、
「みんなが言うには、ものすごく蒸れるので、本当は何もかぶりたくないそうです。(中略)夏はやはりナマ頭でいる人が増えます。Rちゃんは絶対にカツラをつけて外出するタイプでしたので、うちに遊びに来て、まず最初に『頭とっていい?』と。カバンの上にわっさり置かれたカツラを、猫どもがクンクンしていたのを思い出します。(中略)20代~40代は、振り返ってみると、カツラはなくても良かったと言う人も多いです。みんな、スキンヘッドで化粧すると、なかなかカッコいいんですよ、これが」
読んでおもしろく元気が出て、役に立つ。ただしご本人いわく、
「だまされました、という人も多いです(笑)。実際の治療はずっときつかったです、と」
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