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膵がん・CT検査
膵がんが増殖して隣接する脾臓に入り込む様子を捉える
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
63歳の男性Lさん。1年ほど前から、ときどき左の脇腹(側腹部)に痛みがあり、気になって受診。超音波検査で膵がんの疑いが出たため、国立がん研究センターを紹介され、CT検査にて膵尾部に4.3センチのがんが発見された
膵がんの発見が難しい理由
膵臓は胃の裏側(背中側)にあり、長さは約15センチで、おたまじゃくしのような形をしています。頭の部分は十二指腸とつながっており、この頭部を膵頭部、中央付近を膵体部、尾っぽの部分を膵尾部といいます。
そのどこにがんができるかで、特徴的な症状が出ることがあります。たとえば膵頭部にできたがんが胆管に入り込んで胆汁の流れを塞いでしまうと黄疸が出ます。膵体部では消化液を分泌する膵管が侵されて詰まってしまうと、末梢の膵管が拡張したり、痛みの強い急性膵炎の症状が出ます。
しかし、いずれもがんが広がってから出る症状で、初期ではほとんど特異的な自覚症状がないのが普通です。とくにLさんのように、膵尾部にがんができた場合はその傾向が強く、隣接する臓器に侵潤が広がることで断続的な痛みが出るなどして、発見されることが多いのです。
「他の疾患のために超音波検査やCT検査をしていて、偶然、膵がんが発見されるというケースも少なくありません」
膵がんの発見が遅れがちな点について、森山さんはこのようにも言います。
「誰を対象に検査をすべきか、まだよくわかっていないのです。すなわち有効な検診の方法が確立されていないこと。初期症状が乏しいこと。そしてがん細胞の悪性度が高いこと。これらが相まって膵がんは早期発見が難しい性質の悪いがんとして恐れられているのです」
明確なのですが、確定診断は内視鏡により組織を採取し、顕微鏡で組織型を覗く病理検査によって行います。
CTはがんの広がりを見るのに有効
これまで膵がんの確定診断としてはERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)という検査が行われてきました。これを行うと患者さんは苦しく、身体的負担も大きいことから、最近ではMRCP(MR胆管膵管造影)にて代替する施設もあります。
Lさんの場合、超音波検査で膵がんがあることの診断(存在診断)はついており、その確認とがんの広がりを見ることが主目的でCT検査が行われました。膵がんのCT検査は、がんの存在を確かめるためにも有効ですが、進展度や隣接する臓器へ侵潤していないか、離れた臓器へ転移していないかを確認する検査としても有用です。
「案の定、膵がんは隣接する脾臓に侵潤していました。膵がんは肝がんのようにくっきりとした輪郭を持ってはいませんが、膵尾部のがんが進展して、脾臓に入り込んでいる様子がはっきりと写っているのがわかります」(森山さん)
矢印に囲まれている部分が膵がんですが、本来ならおたまじゃくしの尾っぽのように見えるはずの尾部が、がんの増殖により膨らんでしまい、膵臓と脾臓の境界も崩れてしまって明らかではありません。見ようによっては、がんが膵から脾に乗り移るように広がっているようにも見えます。
各種検査を組み合わせて治療方針を決める
膵がんはこれくらいの大きさになれば、周囲の血管を巻き込んで広がっているものと思われます。
「この後、治療方針を決めるために血管造影を行います、その画像には、がんが血管を巻き込むようにして周囲の血管を引っ張り込んでいる様子が写るはずです」(森山さん)
膵がんは初期でも遠隔転移を起こすがんとして知られていますが、血流やリンパ流に乗って遠くの臓器に辿り着くものと思われます。
なおLさんは検査の結果、手術の適応に入り、膵臓を切除しました。 手術は膵がんでは唯一の根治的な治療法ですが、悪性度の高いがんですから手術後も油断ができないのは言うまでもありません。
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