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食道がん・食道内視鏡
進行すると周囲の粘膜が赤っぽくなり、しばしば出血跡が

監修:森山紀之 国立がんセンターがん予防・検診研究センター長
取材・文:黒木要
発行:2007年8月
更新:2013年4月

  
森山紀之さん

もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断

患者プロフィール
50歳の男性Hさん。2年ほど前から、ときどき食物を呑み込むときにつっかかるような感じがあった。3カ月ほど前からとくに肉を食したときに違和感が顕著になり受診。食道の中央付近に約7センチの進行がんが発見された

胃カメラに似た食道内視鏡検査

食道は喉頭の後ろ付近からはじまり、横隔膜の下部で胃とつながる長さ25~30センチの管状の臓器です。食道がんは、この内腔の粘膜から発生します。

がんが大きくなると、食道の内腔のほうへせり出し、内腔が次第に狭くなるとともに、食道壁にも潜り込んでいき、壁を突破すると周囲にある気管や大動脈に食い込んでいきます。

しかし、初期では自覚症状はほとんどありません。進行するにつれものを呑み込むときの違和感、異常を感ずることが多くなり、診断がつく時点では7割以上の人が、その症状を訴えるという調査結果があります。Hさんのように肉を食べるときに嚥下異常を感ずる人は多く、呑み込むときの滑りが悪いためと考えられています。

Hさんの場合、検査はまずエックス線による撮影から行いました。

その画像には、がんの進展と思われる食道内腔に狭窄が認められたので、次に食道内視鏡による検査を行いました。

食道内視鏡とは、胃の内視鏡検査いわゆる胃カメラと同様のもので、カメラを呑み込んで行います。すると、ひと目でわかるがんが発見されたのです。

その画像の特徴とは、

「食道内腔に向かって、がんが大きく隆起していました。大きさは約7センチで、食道がんとしては大きなほうです」(森山さん)

食道がんにはさまざまな型がありますが、進行がんではこのように隆起している型が多いといいます。

「隆起した部分もゴツゴツとしていかにも不整形で、これもがんの特徴をよく表しています」(森山さん)

粘膜の色も、がんの存在を見極めるうえで重要なポイントです。

「正常な食道粘膜は、ツルっとしてなめらかであり、きれいなピンク色をしています。しかし、進行したがんが存在すると、周囲の粘膜が赤っぽくなり、この画像でも現われているように、隆起したがんの部分も出血した痕跡が、しばしば見られるようになります」(森山さん)

このように進行した食道がんは、内視鏡の画像だけでも、がんであることは明確なのですが、確定診断は内視鏡により組織を採取し、顕微鏡で組織型を覗く病理検査によって行います。

食道内視鏡画像

周囲の粘膜がピンク色から赤っぽくなり、隆起したがんの部分には出血した痕跡がみられる

食道内視鏡画像の解説イラスト
矢印の先の付近までがんが広がっている


初期の食道がんを見つける方法

Hさんはこの後、CT検査を受け、食道周囲や全身への転移が認められなかったので、手術を受けました。

食道の壁はあまり厚くなく、重要な血管や臓器、組織が隣接しており、粘膜を越えるがんになると、これらへの臓器や組織への浸潤・転移する率が高くなるので、その有無を調べる検査は必須になるのです。

「とくに縦隔という左右の肺を分ける壁に転移することが多いので、この部分をCTやPETで調べるのが一般的です」(森山さん)

なお、進行した食道がんでは、がんの隆起により食道内腔が狭まっている、あるいはほとんど塞がっていることがあり、それより奥に食道内視鏡の先端を進められないケースがあります。手前からがんを眺める状態です。

がんの存在を確認するにはそれでよいのですが、治療の方針を決めるための検査としては不十分になります。

「そういったときにはCTやMRI、エックス線検査を組み合わせて、がんの全体像を捉えるのです」(森山さん)

なお、食道内視鏡は初期の食道がんを見つける検査としても、よく使われます。しかし初期の食道がんでは、隆起やひと目でわかる特徴的な発色は、ほとんどありません。では、どのようにして見つけるのでしょうか?

「ルゴール液といって青いヨード液をがんと疑わしい部分に散布して染色します。するとがんの部分は染まらずに白く残るのです。この方法により、初期の食道がんはかなり発見しやすくなりました」(森山さん)

最近の食道内視鏡は、ファイバーの径が大分細くなってきているので、呑み込むときの苦痛もかなり緩和されています。

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