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卵巣がん・MRI
風船の中に黒い、ヨーヨーのような形状を見つける
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
46歳女性。2年ほど前からときどき腹部の膨満感や違和感があったが、特に気にならず放置していた。半年ほど前に下腹部がぽっこりと目立つように膨らんできたので、近くの婦人科を受診。卵巣がんが見つかり、国立がん研究センターを紹介された。再度の検査で、7センチ強の大きな卵巣がんであることがわかった
卵巣がんが見つかるパターン
卵巣は親指の先ほどの小さな臓器ですが、がんになって進行すると、周囲の臓器を圧迫するほどの大きさに腫れることがよくあります。
そこまで大きく腫れると、自覚できる症状につながります。自覚症状で多いのは腹部膨満感ですが、これは卵巣がん特有の症状ではないので、どうしても見逃しがちなのです。
「ただ、それが相次いだり、見た目にわかるほどにぽっこりと下腹部が膨らんでくると、さすがに受診する人が増えて、検査をして見つかるというパターンがあります」(森山さん)
他の疾患の疑いで受診して、腹部超音波検査を行い、偶然に卵巣がんが発見される、というケースも多いようです。
腹部超音波検査はお腹の中の胎児の様子を見るときなどにも使用しますが、その検査で卵巣がんとおぼしき異常が見つかったら、確認のためにCTやMRI検査(写真)を行います。
どちらの機器でもよいのですが、骨盤内にはとくに、女性の場合にはデリケートな臓器がたくさんあるので、妊娠の可能性のある若い女性や、体力のない高齢者の場合はどちらかというとMRIが選ばれることが多いようです。
「子宮内膜症に伴うことのある内膜性嚢胞という良性腫瘍がありますが、それと卵巣がんの見分けがつきやすいことも、MRI検査のメリットです」(森山さん)
ヨーヨーのような形状
水平断面(下から見た断面)
よほどの偶然がない限り、多くは進行した状態で卵巣がんは見つかります。
その画像検査所見には、大きな特徴がいくつかあります。
「1つ目は嚢胞の形成です。2つ目はその嚢胞の中に固形状の充実部が存在することです。その形はあたかもヨーヨー(水風船)のようでもあります」(森山さん)
ヨーヨーとは言い得て妙で、実際、風船に当たる嚢胞の中は水が溜まっています。
検査画像をご覧いただくと、子宮を中央にして、左に正常の卵巣が存在しています。子宮の右にヨーヨーを逆さまにしたような卵巣がんが見えます。正常な卵巣の数倍の大きさであるのがよくわかります。風船の中の黒く写っているのが水です。
卵巣がんの底部、白く写っている部分はヨーヨーの結び目のようにも見えますが、ここが固形状の充実部で、
「ここにがん細胞がびっしりと詰まっており、ヨーヨーの中の水には、たくさんのがん細胞が浮遊しています」(森山さん)
もう1度確認すると、進行卵巣がんにおいては、ヨーヨーのような嚢胞と、固形状の充実部がよく見られ、特徴的な画像所見となります。
腹水が見られるのも、よくある所見
3つ目の卵巣がんの画像所見の特徴は、腹水です。
腹水は、その字面通り、腹腔に水が溜まることで、消化器がんや婦人科がんがかなり進むと、この症状を伴うようになります。
いずれにしろ、がんが腹腔にばら撒かれるように散らばることで、腹水が溜まるようになります。
今回の検査画像では、まだ腹水は存在していませんが、
「ヨーヨーのように見える卵巣がんが、さらに膨らんではじけると、水の中に浮遊しているがんが腹腔に散らばります。これもがんの転移形態の1つで、播種と言います。播種が起こると、やがて腹水が溜まり、検査画像でもはっきりとそれが写るようになります。
嚢胞と固形状の充実部、そして腹水。この3つが進行卵巣がんの典型的な画像所見です」(森山さん)
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