患者会の元気の素を

文:田中祐次 東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワーク部門客員助手
NPO血液患者コミュニティ「ももの木」理事長
イラスト:杉本健吾
発行:2009年1月
更新:2013年4月

  
ももイラスト

たなか ゆうじ
1970年生まれ。徳島大学卒業。東京大学、都立駒込病院を経て、米国デューク大学に留学。
現在は東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワーク部門客員助手。
2000年、患者会血液患者コミュニティ「ももの木」を設立し、定期的な交流会を続けている

患者会に元気をもらいに来たという患者さんに、患者会が終わった後に聞きました。

イラスト

「元気もらった?」

すると、その方は、笑顔で「はい」と応えてくれました。

人を元気にさせてくれる患者会には何かあるのだと思いました。その日の患者会はいつものとおり、最初にみんなが自己紹介をし、そして、それぞれ小グループになって話していました。そのまま尽きることのない3時間のおしゃべりが続き、時間になって終わり。これだけです。

僕自身、このような集まりはSelf Help Groupのような効果があるのではないかと感じています。Self Help Groupは、アルコール中毒の患者さんの集まりなどの自助グループとして知られていて、そこでは、同じ体験を共有し、社会復帰の準備、自分が皆の役に立つことを感じる、などの効果があるといわれています。僕は、がん患者さんの交流会でも同じようなことを感じています。だからこそ、参加した患者さんが元気を出すことができるのだと思います。

その一方で、患者会に参加する人たちが望むことに「主治医の先生と話がしたい」ということを聞きます。患者さんは皆、医師が忙しいことを知っています。そして診察室では医療以外の話ができないことを知っています。でも、人として主治医の先生に触れたいと思っています。ここに、人としての信頼が生まれ、それが医師と患者さんの信頼を結ぶことにつながる可能性があると思います。

でも、残念ながら医療者はあまり患者会に興味を持たず、患者会へ積極的には参加しません。そして、実は患者さんも患者会に参加している人は少なく、多くの患者さんは参加していないといわれています。

患者会に参加していない医療者や患者さんが、患者会のことを知っていて参加しないことを選択しているのであれば、それは仕方ないのですが、僕は、患者会のことをあまり知らず、もしかしたら、患者会のことを知れば参加したいと考える医療者や患者さんがいるのではないかと考えました。そこで、患者会とはこういうことが行われている、ということに加えて、患者会ではこういった医療効果が生まれる、ということを伝えたいと思いました。

現在のところ、患者会が医療にどのように貢献できているのか、まだ調べられていないと思います。だから、医療者も患者会に関してはあまり積極的ではないのかもしれません。

でも、患者会で元気をもらう患者さんがいるという事実は、僕は、患者会が医療に何かしらの貢献をしている、しかし、それがまだ十分に証明されてない、知られていないのだと思うのです。

患者会の元気の素を見つけたい、そう思うのでした。そこに、予感を感じています。

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