副作用のあるホルモン療法の代わりとして、漢方治療は可能か
2年前に前立腺がんが見つかって、前立腺の全摘手術を受けました。手術後、しばらくしてからホルモン療法を始めました。ホルモン療法には、筋肉が落ちたり、骨がもろくなったりする副作用があると言われています。これらの副作用は、漢方薬を用いて減らせることはできないのでしょうか。また、ホルモン療法の代わりに漢方治療をすることは可能でしょうか。
(大分県 男性 68歳)
A 男性ホルモン作用を持つ漢方薬は、筋肉は元に戻ってもがんは悪化する
一般的なホルモン療法は、脳の下垂体に働いて、精巣由来の男性ホルモンを抑えるLH|RHアゴニストというホルモン療法剤を用います。リュープリン(一般名酢酸リュープロレリン)やゾラデックス(一般名酢酸ゴセレリン)という薬剤が使われています。このホルモン療法には、ご指摘のように、筋肉が落ちる、骨がもろくなる、更年期障害などの副作用があります。筋肉が落ちるのは、男性ホルモンが少なくなって、女性並みの男性ホルモン値になるからです。残念ですが、筋肉が落ちるという副作用に有効な西洋薬はありません。
男性ホルモンの作用を持つ漢方薬を用いると、筋肉は元に戻っても、前立腺がんが悪化してしまう可能性があります。
骨がもろくなる副作用には、骨粗鬆症治療薬のビスホスホネート剤であるゾメタ(一般名ゾレドロン酸)などを用います。ビスホスホネートに加えて、カルシウム、ビタミンDによる併用療法が有効です。カルシウムは食事で摂取します。ビタミンDは食事で摂取し、日光浴で活性化されます。
漢方薬の中には、骨粗鬆症そのものにではなく、骨粗鬆症に伴う足のしびれや、神経痛などに有効なものもあるようです。
ホルモン療法による更年期障害の症状の軽減に効果的な漢方薬は何種類かあります。また、治療効果は少なく、副作用も少ない特別なホルモン療法もあります。抗アンドロゲン剤のカソデックス(一般名ビカルタミド)やオダイン(一般名フルタミド)を単独で用いる治療法です。手術後の再発予防に用いられることがあります。