ホルモン療法で前立腺がんを治療中。陽子線治療はどうか
1985年に前立腺肥大症が見つかり、それ以降、飲み薬を服用し、経過を観察していました。2005年に前立腺がんが発見され、ステージは2か3で、転移はないと言われています。現在、リュープリン(一般名リュープロレリン)を12週に1回注射するホルモン療法を受けていて、腫瘍マーカーのPSA値は0.003ナノグラム/ミリリットルです。また、夜間に頻尿があるため、フリバス(一般名ナフトピジル)とトリプタノール(一般名アミトリプチリン)を内服しています。以上のような状況で、今のままリュープリンによるホルモン療法を続けていてよいでしょうか。陽子線治療などがあると聞きましたが、受けたほうがよいでしょうか。
(茨城県 男性 83歳)
A ホルモン療法は継続をすすめる。陽子線治療は検討に値する
ステージ(病期)は「2」か「3」であるとお書きですが、前立腺がんでは、こうした分類は通常しません。もしかして「pT2」か「pT3」という意味かもしれません。もしそうなら、pT2はがんが組織に限局していること、pT3はがんが組織の周囲へ浸潤していることを表します。
リュープリンには、4週に1度行うタイプと12週に1度行うタイプがあります。後者のリュープリンの量は前者の3倍ですが、コストは後者のほうがかなり低くなります。ご相談者は後者、すなわち12週に1度行うタイプのリュープリンをお使いです。PSA(前立腺特異抗原)値は現在0.003と、非常に低い状態です。これはリュープリンが功を奏していることの表れと推測します。ただし、元の数値が幾らで、どれくらいの期間でどれほど下がったのかは文面だけではわかりません。
フリバスとトリプタノールは、合併している前立腺肥大症の症状を緩和し、排尿障害を改善するために内服されているのでしょう。
以上の状況を踏まえると、ホルモン療法を続けることは望ましいといえます。ただし、今のままリュープリンを継続して使用するのか、それとも間欠療法に変えるかという点は検討事項になります。
間欠療法とは、ホルモン療法を継続的に行うのではなく、PSA値が下がったところで、1度、治療を中止し、PSA値が再び上昇した際に再開する治療法です。
仮にPSA値が下がって間もないのであれば、今、ホルモン療法をやめると、PSA値が急上昇する可能性が高まります。そのため、この場合は、間欠療法に切り替えることはおすすめできません。また、2005年から3年ほどの間に少しずつ下がって、0.003になった場合も、間欠療法は今はまだすすめられません。一方、もしPSA値が下がった状態が2年以上続いているのであれば、間欠療法を選択する方法もないわけではありません。
全体的に考えてみると、仮に間欠療法を行うにしても、まだ早いという印象を持ちます。また、そもそも間欠療法のエビデンス(科学的根拠)はまだ確立していないため、その点からも、少なくとも当面は継続的なホルモン療法を続けたほうがよいかもしれません。
陽子線治療は、PSA値が非常に下がっている現状を考えると、必ずしも必要ないでしょう。ただし、仮にpT3とすると、ホルモン療法でPSA値が抑えられていても、腫瘍が再燃し、PSA値が上昇してくる可能性が若干あります。そのため、pT3の場合は、PSA値が下がっているときに放射線治療を行い、がん細胞を念入りに叩いておくという考え方もあります。また、PSA値が下がっているといっても、0(正確には「測定できないほどの小さな数値」)ではありません。 仮にpT3で、なおかつ経済的な事情など、いろいろな条件をクリアするのであれば、陽子線治療を受けてみるのも1つの選択肢です。陽子線治療は一般的な放射線治療に比べて、がん細胞に的を絞った治療をしやすいため、副作用も比較的少なく済みます。
ちなみに、お住まいの茨城県には筑波大学付属病院があり、そこでは陽子線治療を行っています。相談されてみるのもよいかもしれません。