左の腎臓に3.5センチの腫瘍。腎臓温存手術でよいか
左の腎臓に3.5センチの悪性腫瘍が発見されました。主治医からは「この大きさなら腎臓を温存する手術ができそうです」と言われました。腎臓温存手術は、腎臓全摘手術と再発率も生存率も同じとの説明も受け、温存手術をすすめられています。腎臓温存手術で問題はないでしょうか。また、全摘手術をして腎臓が1つになった場合、日常生活などで不便なことはないのでしょうか。
(大阪府 男性 62歳)
A 条件を満たしていれば、全摘手術と成績は同じ
腎臓温存手術は、腫瘍とその周囲の腎組織をくりぬくように切除する手術です。この温存手術が適応となるのは、腎臓がんが両側に発生したとき、腎臓が1つしかない単腎の人に腎臓がんができたとき、腎臓は2つあるが腎機能の悪化で実質的に単腎(機能的単腎)の状態の人に腎臓がんが起きた場合です。これらの場合には、全摘手術ではなく温存手術を選びます。
このほかに、ある条件にあてはまっていて、患者さん自身が選択したときにも温存手術を行います。通常、腫瘍の直径が4センチ未満で、腫瘍の境界が鮮明ではっきりしていて、腫瘍が腎門部と呼ばれる腎臓の内側のくぼみに接していないことが条件です。
これまでの臨床研究では、がんが4センチ未満の場合、腎臓を全摘しても温存しても、再発率も生存率も変わらないという結果が出ています。
あなたの場合、がんが3.5センチですから温存手術の対象になると思います。おそらく、腫瘍の境界が鮮明で、腎門部以外のところにできた腎臓がんなのだと推定されます。そのため、主治医は、温存手術をおすすめしているのだと考えられます。
全摘手術で腎臓が1つになった場合ですが、腎機能の面では大きな影響はないと思います。実際、生体腎移植では片方の腎臓を移植用に提供しているぐらいです。腎臓が1つになっても日常生活では大きな問題はありません。
ただし、スペアがないという意味でのリスクはあると思います。例えば、尿管結石などが起きた場合、腎臓が1つしかない場合には、すぐに対応する必要があります。