繰り返される再発。ネクサバールを使ってみたいが
68歳の夫が脳に腎がんを再発させました。手術を受けるものの、近い将来、また再発を繰り返すのではないかと心配です。夫が腎がんと診断されて、手術で右の腎臓を切除したのは5年前です。その2年後に肺に再発し、手術で切除しました。そして、インターフェロンや抗がん剤の治療も受けたのに、また脳に再発させたのです。腎がんにネクサバールという新薬ができたと聞きました。どのような薬なのか教えてくださいませんでしょうか。
(福岡県 女性 62歳)
A 転移巣が切除できなかったときに検討する治療薬
ネクサバール(一般名ソラフェニブ)は、進行腎がんに対する経口の分子標的薬です。すでに欧米では2006年から発売され、日本でも早ければ今年中に承認・販売されるかもしれません。
米国の臨床試験では進行腎がんの患者202人にネクサバールを投与したら、73人(36パーセント)に腫瘍縮小効果が認められました。そして、腫瘍の増殖が停止した65人の患者を2つのグループに分け、一方にネクサバール、もう一方に偽薬を投与したら、前者の無増悪生存期間(24週)は後者(6週)より18週も上回るという優れた治療成績をあげています。
副作用は手足の皮膚炎や下痢、倦怠感などがあり、なかでも高血圧は31パーセントの患者さんに出現し、その程度もグレード3、4と強いものもあったと報告されています。
ネクサバールはスーテントと同じ血管内皮細胞のVEGF受容体を標的としています。スーテントと比べると治療効果が少し落ちるものの、副作用が少ないことが利点ではないかと考えられています。しかし、いずれも思わぬ副作用が出現する可能性もありますから、十分に注意しなければなりません。
ところで、ご主人のように再発・転移を繰り返す腎がんは少なくありません。今まで転移を伴う腎がんに対する治療薬は、インターフェロンやインターロイキン2などしかありませんでしたので、ネクサバールやスーテントが再発予防薬として大いに期待されるところです。が、今のところ再発を抑える効果があるかどうかは今後の検討課題といえます。あくまでも再発したときに手術で腫瘍のすべてを切除できなかったり、放射線で腫瘍のすべてを死滅させられなかったりしたときに投与される治療薬です。ご主人の場合、手術で脳転移巣のすべてが切除できなかったとき、ネクサバールの投与が検討されると思います。