乳頭状腎細胞がんの治癒の可能性は?

回答者:大家 基嗣
慶應義塾大学病院 泌尿器科講師
発行:2007年5月
更新:2013年12月

  

腎臓がんの手術を受けました。約8センチの腫瘍でした。病理検査の結果、乳頭状腎細胞がんと告げられました。乳頭状腎細胞がんとは、どんながんでしょうか。また、再発・転移しやすいがんと聞いたのですが、乳頭状腎細胞がんは治癒できる確率はどのくらいありますか。

(長野県 男性 67歳)

A 手術で腫瘍をすべて切除できていれば、治癒する可能性は非常に高い

腎臓は血液を濾して尿をつくる腎実質と、できた尿を集めて尿管へ送る腎杯・腎盂の2つに大きく分けられます。腎実質は約100万個のネフロン(糸球体と尿細管)から形成され、いわば毛細血管の塊ともいえますが、このネフロンの尿細管から発生するのが腎細胞がん(腎がん)です。

腎がんは淡明型腎がん、乳頭型腎がん、嫌色素型腎がん、集合管がんに分けられます。そのうち淡明型腎がんがもっとも多く、腎がん全体の約80パーセントを占め、乳頭型腎がん10数パーセント、嫌色素型腎がん約5パーセント、集合管がんは約1パーセントです。

ご質問者の乳頭状腎細胞がんとは乳頭型腎がんのことです。淡明型腎がんに次いで多いとはいうものの、慶應義塾大学病院ではこの15年間で40人くらいの患者さんにしか見受けられませんでした。

一般的に腎がんというと顕著な血管新生や、肺やリンパ節、肝臓、骨、脳などの他臓器へ再発・転移しやすいことが大きな特徴といえます。しかし、それは淡明型腎がんの特徴です。乳頭型腎がんについてもう少し詳しく説明すると、タイプ1とタイプ2の2つに分けられます。タイプ1は60歳以上の高齢者に多く、再発・転移もまれで、きわめて予後が良好です。

一方、タイプ2は10~40代の若年者に発生し、がんの発見時に転移を伴っていることが多く、予後はあまり芳しくありません。

おそらく67歳という年齢や、転移が認められていない様子からタイプ1の乳頭型腎がんと推察されます。ですから、手術で腫瘍をすべて切除できたとすれば、治癒する可能性は非常に高いといえます。

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