グレード3の星状細胞腫。術後化学療法は必要か

回答者:森田 明夫
NTT東日本関東病院 脳神経外科部長
発行:2011年1月
更新:2013年11月

  

65歳の夫のことでご相談です。夫は頭痛やしびれがひどくなり、病院で脳の詳しい検査を受けたところ、グレード(悪性度)3の星状細胞腫と診断されました。主治医は、手術で腫瘍をある程度切除したうえで、放射線療法と化学療法を併用したいと言っています。星状細胞腫では、放射線療法は必要だそうですが、化学療法も加えると体の負担が大きすぎる気もします。化学療法も受けるべきでしょうか。また、ほかにいい治療法があれば、教えていただけると助かります。

(神奈川県 女性 62歳)

A 術後の放射線療法と化学療法を勧める

星状細胞腫は、神経膠腫(グリオーマ)では最も多いタイプで、グレードは1~4の4段階あります。3以上になると根治は極めて難しいのが現状です。

神経膠腫の手術ではできるだけ腫瘍を多く切除するのが基本です。ところが、星状細胞腫はモザイクのように脳の正常組織内に浸潤する性質があり、グレード3ともなれば、浸潤の度合いも大きく、脳を傷つけると言語機能や運動機能などが障害される危険が高いため、正常組織を傷つけずに腫瘍をすべて取り除くことはできません。

そこで、取りきれなかったがん細胞を術後の補助療法で叩きます。補助療法はグレード2までであれば、病巣部の放射線照射のみでいいとされていますが、グレード3以上であれば、放射線照射に加え、アルキル化剤のテモダール(一般名テモゾロミド)を投与するのが標準となっています。

テモダールは、比較的副作用が少なくて安全であり、術後に放射線とテモダールを併用すれば、放射線治療単独に比べ、再発率の低下や全生存期間の延長につながることが、グレード3~4の脳腫瘍を対象とした複数の臨床試験で明らかになっています。

テモダールは経口剤で、外来で継続して治療ができるため、QOL(生活の質)の点でも評価の高い薬です。ご主人は65歳ということで、化学療法に耐えられる体力は十分あると推察されます。化学療法に代わる、または追加する治療法としては、血管新生阻害剤であるアバスチン(一般名ベバシズマブ)の追加投与、インターフェロン療法、樹状細胞療法、ウイルス療法などの研究も進められています。

しかし、残念ながら、現時点ではいずれも明らかに有効というエビデンス(科学的根拠)が確立されておらず、広く普及はしていません。 そのため、結論としては術後の放射線療法と化学療法の併用をお勧めします。

樹状細胞療法=樹状細胞は免疫細胞の一種で、がんを見つけると免疫システムに攻撃を指令する。樹状細胞療法は樹状細胞にがん細胞の成分などを与え、がんへの攻撃力を高める免疫療法の一種
ウイルス療法=がん細胞に選択的に感染するよう遺伝子を組み換えたウイルスを体内に入れ、がんを死滅させる治療法

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