急性骨髄性白血病で寛解。地固めの後、移植は受けるべきか

回答者:秋山 秀樹
東京都立駒込病院 血液内科医長
発行:2006年1月
更新:2013年12月

  

58歳の父が、急性骨髄性白血病のM2と診断されました。抗がん剤治療を受けたことで寛解になり、その後の地固め療法まで終了しています。主治医からは、今後、造血幹細胞移植を行うか、もしくは、差し当たって治療は行わずに経過を観察すると言われています。父も家族も、造血幹細胞移植を受けるべきかとても迷っています。受ける場合、どんな方法があるのでしょうか。ちなみに、父には弟2人と妹1人がいます。

(広島県 女性 31歳)

A 染色体を確認し、受けるとしたら血縁者からミニ移植を

現在、この方に可能な造血幹細胞移植には、主に次の5つがあります。

(1)血縁者からの通常の骨髄移植
(2)血縁者からの通常の末梢血幹細胞移植
(3)血縁者からの末梢血幹細胞のミニ移植
(4)骨髄バンクに登録しているドナーから受ける骨髄移植
(5)骨髄バンクに登録しているドナーから受けるミニ移植

ミニ移植について、少しご説明しましょう。

通常の造血幹細胞移植は、移植の前処置として、大量の抗がん剤や放射線治療を行います。しかし、そのためには強力な治療に耐えられる体力が必要です。

ミニ移植は、この前処置を通常の移植より弱く行った後、造血幹細胞を移植する方法です。前処置をあまり行わない分、抗がん剤や放射線照射による副作用は通常の造血幹細胞移植に比べると弱いのが特長です。

しかし、ミニ移植だからといって、命に関わる副作用が起こらないわけではありません。とくにGVHDが問題で、治療成績は医療機関によってかなりバラツキがあるようです。

以上の説明をした上で、改めてご質問に戻ります。この方の年齢は58歳ということですが、現在、日本の多くの医療機関では、通常の造血幹細胞移植を受けられる人の年齢を55歳までとしています。年齢が高くなると、それだけ命に関わる危険が高まるためです。ですから、この方の場合、前記のうち(1)(2)(4)は通常、除外されてしまいます。

そうすると、(3)の「血縁者からの末梢血幹細胞のミニ移植」と(5)の「骨髄バンクに登録しているドナーから受けるミニ移植」が残りますが、非血縁者のミニ移植はまだ積極的には行われておらず、実験的な治療の意味合いがあります。ですから、ご兄弟の中にドナーになれる方がいらっしゃるのであれば、(3)を勧めます。

ここまでは「造血幹細胞移植を受ける」という前提で説明してきました。しかし、そもそも移植を受けたほうがよいのかどうかが問題です。それには、白血病細胞の染色体の結果を調べる必要がありそうです。

この結果によって、予後がある程度、推測できます。予後がよい部類に入る染色体であれば、経過観察を選択されるのもよいと思います。逆に、予後が悪い部類の染色体の場合は移植を受けることを考えてもよいでしょう。

基本的な考え方としては、移植を受けると、再発する危険性は減少します。しかし、移植を受けると、その副作用で亡くなる危険性は高まります。亡くならないまでも、GVHDなどが起こり、QOL(生活の質)は下がる可能性があります。ただ、いずれにしてもやってみないとわからないのが正直なところです。

以上を踏まえて、改めて主治医にご相談下さい。

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート11月 掲載記事更新!