急性骨髄性白血病の抗がん剤治療中に気をつけることは?

回答者:薄井 紀子
東京慈恵会医科大学付属第3病院 腫瘍・血液内科診療部長
発行:2012年3月
更新:2013年12月

  

急性骨髄性白血病の初回寛解導入療法で、ダウノマイシンとキロサイドの2剤併用の抗がん剤治療を始めました。現在は、入院して治療していますが、治療中の副作用について、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか。また、一時的に退院して自宅に帰る際に、生活面で気をつけることについても教えてください。

(山形県 男性 50歳)

A 感染防止が大切。手洗い、マスク、食事にも気をつけて

急性骨髄性白血病の抗がん剤治療で現れる症状には、発熱や感染症、吐き気・嘔吐、脱毛、口内炎などがあります。

とくに気をつけたいのは、発熱や感染症です。白血病治療では、がん化した白血球を抗がん剤で殺す際に、正常な白血球も急激に減ってしまいます。白血球は本来、体内に侵入した病原菌などを攻撃する免疫機能を担っていますが、白血球が減ることにより、感染症にかかりやすくなり、それによる発熱や全身状態の悪化も著しくなります。そのため、初回治療の入院中はとくに、感染を極力防ぐ環境として、クリーンルームなどに入室します。

この方が受けているような初回の寛解導入療法によって、がん化した白血病を殺す治療は、約1カ月間行います。その後は、再発を防ぐための地固め療法として、化学療法を数回重ねていきます。

初回治療はとくに大切であり、がん化した白血病をゼロ近くまで殺せて質のよい寛解が得られれば、その先の地固め療法でもよい効果が出ることが多いのです。初回治療中にはとくに、感染症が起きて治療を中断せざることがないよう、注意が必要です。

また、地固め療法中などには、一時的に帰宅して家で過ごすこともあるかと思います。その際には、手洗い・うがいをする、なるべく人ごみを避ける、外出時はマスクをするなど、感染防止の対策をとりましょう。

腸内細菌による感染を防ぐために、食事については、なるべく発酵食品や刺身などの生ものを避けます。納豆を食べるなら煮豆の料理を、発酵の強いチーズよりはプロセスチーズを、野菜も生ではなく加熱したものをというように、食事を楽しみながらも安全に栄養をとる工夫をできるだけしていただければと思います。

退院する際には、発熱時のために、飲み薬の抗生剤を処方されます。38度C以上の熱が出たときには、すぐに病院に連絡し、抗生剤を服用します。

多くの人に現れる症状は、吐き気や嘔吐です。これらは、制吐剤を使って抑えていきます。ダウノマイシン、イダマイシン、キロサイドなど、この病気によく用いられる抗がん剤は、吐き気を催す作用が強い他の抗がん剤と比べて副作用の出方も穏やかなので、嘔吐は約7割の患者さんでコントロールが可能です。

嘔吐はなるべく予防して、治療中は患者さんが栄養を取れて、体力の消耗を抑えることも大切です。

寛解導入療法、地固め療法と、白血病治療では抗がん剤の使用が長期にわたるために、だんだんに吐き気・嘔吐が強く出てくる場合があります。むかむか感や吐き気が気になったら、医師に早めに相談し症状を予防することです。

ダウノマイシン=一般名ダウノルビシン キロサイド=一般名シタラビン イダマイシン=一般名イダルビシン

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