2期の多発性骨髄腫。化学療法後の自家移植は最良の治療か
近くの総合病院で、多発性骨髄腫と診断されました。2期とのことです。年齢や全身状態などから、化学療法をした後で自家移植をする治療を予定しています。ただ、治療期間が長くなり、きつい治療法のようです。受けたほうがよいのかどうか、迷っています。この治療法は最良と言えるのでしょうか。他によい治療法はないでしょうか。
(茨城県 男性 60歳)
A VAD療法→自家移植→大量化学療法に高い効果。今後はサリドマイドも
一般的には、65歳以下か66歳以上かの年齢によって、治療法は異なります。
65歳以下では、最初にVAD療法を行います。VAD療法とは抗がん剤のオンコビン(一般名ビンクリスチン)、アドリアシン(一般名塩酸ドキソルビシン)と、副腎皮質ホルモン剤のデカドロン(一般名デキサメタゾン)を組み合わせた治療です。1コースは約3週間です。3コースで3カ月間ほどかかります。その後、血液のもとをつくる造血幹細胞を採取します。この自家末梢血幹細胞採取にも抗がん剤を用いることが多いです。採取た幹細胞は凍らせておきます。この治療は3~4週間入院して行います。
その後、凍らせておいた幹細胞を戻す自家移植を行います。移植前に、大量化学療法を行います。抗がん剤のアルケラン(一般名メルファラン)という強い薬を使うことが多く、大量化学療法で、骨髄腫を徹底的にやっつけてから、凍結した幹細胞を骨髄に戻します。これは強い治療で、3~4週間かかります。
したがって、トータルで治療期間は最低半年ほどかかります。
相談者は60歳ですから、できれば、強い治療を行って、完全に骨髄腫を抑えたほうがよいと思います。それが最良の治療です。
VAD療法から自家末梢血幹細胞採取、大量化学療法、自家移植までの一連の治療による効果は、80パーセントほどと言われています。なお、米国では、VAD療法の代わりに、分子標的薬のベルケイド(一般名ボルテゾミブ)や、催眠鎮痛剤のサリドマイド(一般名)を用いて、治療効果を向上させているようです。今後は、ベルケイドやサリドマイドからスタートして、最後に自家移植を行うという治療もあると思います。
66歳以上の場合、一般的には、化学療法だけを行います。化学療法だけの治療効果は60パーセントほどです。ですから、前者の強い治療のほうが明らかによく効きます。生存率も前者のほうがよいという報告があります。