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肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 1
術後、夫が浮気! 離婚したいが収入がない
多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624
2年前に、乳がんで片胸を全摘出しました。術後、夫が若い女の人と浮気をしていたことがわかりました。離婚を考えていますが、専業主婦のため私自身には収入がなく、離婚後の生活が心配です。
(50代、女性)
離婚は得ではない。これを機に、不動産や預貯金をあなた名義に
離婚に際して相手(夫側)に請求できるお金は、①財産分与②慰謝料③年金分割ーの3種類です。このほか未成年の子どもがいて、その子をあなたが引き取るならば養育費も請求できますが、50代ということですから、もう未成年のお子さんはいないという前提で考えます。
まずは、①の財産分与について。これは、結婚中に夫婦で築いた財産の清算です。プラスの財産もマイナスの財産も、トータルして2等分するというのが原則です。
最も大きな価値があるのは大抵、現にお住まいの家屋敷です。まずは、これを不動産業者に査定してもらうといいでしょう。そして、まだローン支払中であるならばローンの残高をその査定額から差引きます。これが、不動産の純資産額です。
同様に、預貯金や保険金などについても、その残高を合計し、そこから前借している債務があるならそれを差引いて純資産額を計算します。そして、それら合計額を2等分して財産分与額を算出します。
次に、②の慰謝料について。
あなたの入院中に、「夫が浮気をした」ということだけが離婚の原因なのでしょうか。それとも、前々からいろいろなことがあった上に「入院中、見舞いにも来なくて、愛人と遊び歩いていた」ということなのでしょうか。
慰謝料額は、いわば程度問題なのです。大抵数10万円から1千万円程度ですが、もしも、これまでは仲良く過ごしてきたのに、たまたま入院中に数回女性と浮気 をしたという程度ですと(ご免なさい。それだけでも誠にけしからぬことではありますが)慰謝料は数10万円ぐらいかもしれません。法的に認容される金額 は、決してあなたの喪失感を埋めるに足るものではありません。
3番目は、年金分割についてです。
これは最近、2分の1ルー ルが確立してきました。つまり夫側の年金額と妻側の年金額に差のある場合、夫側の厚生年金や共済年金の報酬比例部分の2分の1を妻側に分割して乗せるもの です。それをしたら、あなたの年金はいくらになるのか、試算してみるといいと思います。最寄りの社会保険事務所に年金手帳と戸籍謄本を持って出向けば、 「年金分割に関する情報通知書」というものを発行してくれます。
これらのことを踏まえて、あなたご自身の当面の生活が成り立つか、また老後の生活が成り立つか、しっかり計算してみてください。
一般的に言って離婚して得になることはまずありません。妻も、夫も、です。それよりは、これを機に夫様を脅かして不動産や預貯金をあなた名義に変えさせるほ うがよくはありませんか。贈与税がかからないよう工夫しながらやってご覧なさい。もし、家屋敷があなたのものになれば、今度浮気をすれば、「出てい けっ!」と啖呵が切れるじゃありませんか。