FP黒田尚子の知ットク!がんマネー処世術 5

年金繰上げ受給

イラスト/コヤマ ノリエ
発行:2013年5月
更新:2014年3月

  

FP黒田尚子 くろだ なおこ 1992年大学卒業後、大手シンクタンク勤務中にFPの資格を取得。1998年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。乳がん体験者コーディネーター


今回は「年金の繰上げ受給」についてです。
公的年金受給は65歳からが原則ですが、治療費や生活費でどうしても早めにお金が必要な場合、年金を前倒しでもらう方法があります。

基本的に公的年金が受け取れるのは65歳からです。会社員が加入する厚生年金も受給開始年齢を60歳から65歳へ段階的に引き上げているところで、以前と比べると会社員だった人が定年(60歳)時に受け取れる年金額はかつての半分程度。しかも今年は「年金の2013年問題」に要注意! 2013年問題とは、1953年4月2日生まれ以降の男性について、公的年金の受給開始年齢が完全に61歳に引き上げられ、60歳時点では無年金になるという問題のことです(なお、女性の場合は引き上げ開始が5年遅れのため「2018年問題」となります)。

つまり、今年4月から、58年生まれの人が60歳になり、そのまま定年退職してしまうと、61歳まで年金をもらえず、無収入期間が生じるわけです。

この〝年金空白期間〟への対応策として、あるいは医療費や生活費が不足してどうしてもお金がすぐに必要という人のために、老齢厚生年金の受給開始を前倒しできる制度が設けられています。これが繰上げ受給です。ただし、繰り上げの期間に応じて年金額は減額されて、一生変わりません。

老齢厚生年金を繰上げすると、1カ月あたり0.5%減額されます。例えば、60歳到達月で繰上げ請求すると、年にして6%(12カ月×0.5%)が減額され、受け取れるのは本来の年金額の94%だけになります。

さらに、老齢厚生年金の繰上げには条件があり、老齢基礎年金も併せて繰上げなければなりません。老齢基礎年金の受給開始年齢は原則65歳ですので、老齢厚生年金と同じく60歳到達月に繰上げ請求すると、減額率は30%(60ヵ月×0.5%)で、受け取れる老齢基礎年金は本来の年金額の70%となります。

そうなると、通常通り65歳から受給する場合とどちらが得か気になりますね。年金受給額の累計で比較すると、61歳から受け取る老齢厚生年金を60歳から受け取った場合は82歳ごろ、65歳から受け取る老齢基礎年金を60歳から受けとった場合は77歳ごろに、受け取る年金総額が同額になります。つまり、それ以上長生きするのであれば、本来の開始年齢で受取った方が年金額は多くなります。

このほか繰上げ受給にあたっては、取消や変更ができない、繰上げ請求後に障害状態になっても障害年金が受け取れないなど、いくつか注意点があります。

繰り上げる場合の注意点や年金見込み額をさらに知りたいときは、最寄りの年金事務所や年金相談センターで相談しましょう。

FP黒田尚子のひと言

公的年金を繰り上げ受給した後に後悔しないよう、ライフプランを考えて検討することが大切です。

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