4歳の息子が悪性リンパ腫になり、治療中です。私はほとんど泊まり込みで息子に付き添っています。ご相談したいのは、9歳になる娘のことです。息子の病気について、どのように説明すればよいのか、よくわかりません。また、会社員の夫はできる限り早く帰宅するようにしていますが、娘は私がほとんど弟につきっきりになっていることの寂しさと、弟に対する心配などいろいろな感情が入り混じり、だんだん気持ちが不安定になっているようです。私たち夫婦の親は遠方に住んでいたり、体が不自由だったりするので、娘の世話を頼めません。娘に対して私たちができることについて、何かアドバイスがあればお願いします。

（兵庫県 女性 35歳）

A　両親の愛情を言葉と態度の両面でしっかり伝える

娘さんは、①お母さんをとられたという気持ちと、②弟さんを心配する気持ちが入り混じっているのですね。

①について、娘さんは愛情に飢えているわけですから、「お父さんもお母さんもあなたを愛しているよ」ということを言葉と態度の両方で示すことが大事です。お家にいられるときには一緒に遊んであげて、お母さんに触れさせる機会をできるだけつくる努力をしなければいけません。

そのためには、まずご主人様の協力が第一です。一般的に、患児のお父さんは仕事が忙しく、病気や介護のことに関与しないケースが多いようです。しかし、できることならお父さんも時々は仕事を休み、お母さんと交代で病院に泊り込んで息子さんに付き添うのが理想でしょう。お母さんが帰宅して娘さんとの時間をつくることで、両親は姉と弟、2人ともに平等にかかわっているという姿勢を示せます。それが無理でも、せめて週末くらいは、お父さんとお母さんが息子さんの付き添いを交替して、なんとかお母さんと娘さんの時間をつくってあげてください。

また、なぜお母さんが弟さんに付き添っていないといけないのかという病気の説明や、おじいちゃん、おばあちゃんが来られないのであれば、そのような家庭の事情、「お父さんがお母さんの代わりになること」などをきちんと娘さんに説明することが大切です。

娘さんと息子さんのつながりを切ってしまうこともよくありません。病室での息子さんの様子をよく話して聞かせ、病状に関する情報をきちんと伝えて、父・母・姉・弟の4人の関係をしっかり築くようにしましょう。

感染症予防のため、息子さんの病室のある病棟内に娘さんが入ることはできないでしょうが、たとえば当院では病棟の外の面談室で姉弟が会うことはできます。そういうところで、娘さんに弟さんやお母さんに触れ合わせてあげましょう。

②については、娘さんにも弟さんの病気についてきちんと説明することが大事です。白血病について、子ども向けにわかりやすく解説している絵本は『君と白血病』＊『君の病気について知ろう～小児白血病』＊、スヌーピーが登場する『チャーリー・ブラウンなぜなんだい？　～ともだちがおもい病気になったとき』＊などいろいろあります。子どものリンパ腫についての絵本はあまりありませんが、白血病とほとんど同じ病気で、類似の治療であると考えてよく、これらの絵本で十分代用できます。

息子さんが入院している病院に娘さんを連れてきて、担当の医師や看護師から病気について話してもらうのもよいでしょう。彼らは多少なりとも児童心理に配慮ができますので、娘さんにもわかるように説明してくれるはずです。

それでも娘さんの気持ちが不安定なら、発達心理に詳しい臨床心理士や精神科医、さらには日本ではまだ数は少ないですが、チャイルド・ライフ・スペシャリスト＊に相談するという方法もあります。

＊『君と白血病』Lynn S. Baker, M.D.著、細谷亮太訳（医学書院）
＊『君の病気について知ろう～小児白血病』渡辺新著（南山堂・非売品のため、かかりつけの病院に置いてないかご相談ください）
＊『チャーリー・ブラウンなぜなんだい？　～ともだちがおもい病気になったとき』Charles M. Schultz著、細谷亮太訳（岩崎書店）
＊チャイルド・ライフ・スペシャリスト（CLS）＝医療環境にある子どもたちへの心理的・社会的ケアを行う専門職