腎がんの多発肺転移。1つだけでも手術で切除できないか
2009年6月に右腎がんステージ3bと判明し、右腎臓、副腎を全摘しました。すでに両肺に多発転移していたので、術後すぐにインターフェロン治療を開始しました。その後、インターロイキン2、スーテント*で治療したものの効果はありませんでした。2010年8月から現在に至るまでネクサバール*を服用しています。腫瘍の増大は止まりましたが、両肺の多発転移はずっと消えません。最初に腎がんが判明したときに9ミリだった、1番大きい肺転移巣が、今は20ミリになっています。この最も大きい腫瘍だけでも手術で取ることはできないでしょうか。ハイパーサーミアやラジオ波焼灼療法の、肺転移への効果はいかがですか。
(福岡県 女性 45歳)
A 多発転移の場合、1つだけ切除しても効果は期待できない
単発の肺転移なら手術する場合はありますが、多発転移は手術の適応にはなりません。取るなら全部取るのが転移巣切除の基本です。
多発転移の場合は、見えているがんを全部取り切ったとしても、ほかにもまだ残っている可能性があります。
たくさんあるうちの1つだけ切除しても治療効果は期待できません。残念ながらがんを治すことはできないし、予後*も変わりはありません。手術することで、かえって体力を落とすだけという可能性もあります。むしろ、肺腫瘍の大きさを見ていくことが治療効果の判定になります。
ただし、痛みなどの症状がある場合には、多発転移であっても、その症状をとるために1つだけ切除する場合はあります。
ラジオ波焼灼療法とは、周波数の低いラジオ波を流して100度前後の熱で焼き、がん細胞を壊死させる治療法です。ラジオ波焼灼療法で焼き切るというのは手術に準ずる効果があるかもしれません。
しかし、がんの局所を40数度の熱で温めるハイパーサーミアという温熱療法は、エビデンス(科学的根拠)のある治療ではありません。
*スーテント=一般名スニチニブ *ネクサバール=一般名ソラフェニブ *予後=今後の病状の医学的な見通し